『機動戦士ガンダムUC ユニコーンの日』上下
機動戦士ガンダムUC 1 ユニコーンの日(上) (角川コミックス・エース 189-1)
- 作者: 福井晴敏
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/09/26
- メディア: コミック
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機動戦士ガンダムUC 2 ユニコーンの日(下) (角川コミックス・エース 189-2)
- 作者: 福井晴敏
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/09/26
- メディア: コミック
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読みましたよ、ユニコーン。
とにかく進みが遅い、上下巻かけてようやく最後に主人公がガンダムに乗るって遅すぎじゃないか――と世間ではもっぱら評判の作品ですね(笑)。
まぁ、個人的には読んでいる間、そこまで気にはならなかったんですが。描写が重いなぁとは思ったものの、話の進みとしてはまぁ。一応これ、アニメの脚本じゃなくて小説なんだし〜と思えば、そこまでではなかったという。
ていうか、歴代富野ガンダムの第一話って、いつも無理してこれくらいの情報量入ってたよね? っていう感想もあり(笑)。あの、富野作品お馴染みの序盤の詰め込みを分かるように展開しながら話を始めれば、これくらいのスロースタートにもなるかなと。
そして、とりあえず下巻まで読んでみて、久しぶりに『ガンダム』に触れてるんだなぁっていう実感がやって来て、それが嬉しかったのでした。
それが具体的にどういう感覚なのかっていうのは説明が難しいんですが……。まぁ富野っぽいセリフ回しっていうのもあるのだけれど。
主人公のごく平凡な日常と、その裏で着々と進行している軍事作戦の動きの対比とか、主人公の日常に対するイライラ具合とか。1人物の視点にこだわる事なく、事態に関わっている多くの人物の動きを丁寧に追おうとする話の構成とか。
量産機がちゃんと頑張ってることとか(笑)。
組織の上の方に立っている人が、ただの飾りとか憎まれ役とかでなく、存在感と意志を持ってるところとか。
その他もろもろ。とにかく話の流れも道具立ても、リアリティへの気配りも、富野ガンダムの空気を上手く出せていると思います。堪能しました。
不満点があるとすれば、やはりどっかに、登場したMSの全体図とスペック、解説を書いたページを作った方が良かったんじゃないかな、というところ。冒頭の口絵のあたりにでも。
まあ、それを入れなかった理由も分かるんですけどね。作者の福井晴敏氏は、ガンダムを「エンタテインメント作品」として……アニメファンや一部のマニアだけでなく、一般の人たちにも広く楽しめる普通のエンタメ作品として認知させようとしているらしく。
というか、端的に「アニメだろ?」っていう世間の先入観を払拭したいらしく。
この作品がアニメ版と文芸版という二つの形態(といっても、単にカバーで表紙の安彦絵を隠すか隠さないかの違い)で売り出されたのもそういう意味でしょうし、登場する機体のスペックなどが本に掲載されていないのも同じ意図なんでしょう。
個人的には……どうなんだろうなぁ。
そうまでして世間一般に認知させる必要は、あるんでしょうかね? ちょっと悩んでしまいます。
無論、ビジネス的には意味あるんでしょうし、それは別に良い。けど、色々と深いテーマや先見性がガンダム作品に込められているにしても、同時に「子供向けのロボットアニメ」でもあるのがガンダムだ――と個人的には思うわけで。
実際、たとえ小説で入り口をつけたとしても、じゃあガンダム界隈に入ってきて目に映るものはって言ったら、結局はプラモやゲームなんだろうし。実際、このユニコーンという作品だって、もうちょっと経てばプラモとゲームの中でものすごい勢いで消化されていく事は間違いないわけですから。
富野ガンダムを、十代、もしくは二十代前半に見ておく事には絶大な意義があると思うけれど、それより上の世代にあえて勧めるのは、何かなぁ、そうまでする必要あるのかしら。
普段、ハリウッド映画やミステリ小説を読んでいる「ガンダムを知らない」層に、改めてガンダムを認識させたいという気分は私にはないのですね。だから、それよりは機体のスペックとかのせてくれと。口絵にリゼル載せとけと(笑)。
あー、まあ、今三十代から四十代の初代ガンダム世代が、世間で気後れを感じずに、胸を張って「俺はガンダムが好きだ」と誰にでも言えるために頑張っているというなら、文句を言う気はないんですが(笑)。
少なくとも私には、そういう気分はない。なんだかんだで、周りにガンダム分かる奴多いし。歴代ガンダムのテーマ性の高さはもっと知られても良いと思うけど、それはブログででものんびり書いて、読みたい奴が読めば良いし。
そんなわけで、福井氏のガンダム戦略については、個人的には「あんまり興味ない」。
作品は文句なしに面白いから、そこは評価しようと思いますが。
とりあえず、あれだ。
リゼル最高(笑)。
久しぶりに、眺めているだけでニヤニヤ笑いが止まらない、私の心をくすぐる素敵なMSです、あれは。こんな気持ちは数年ぶりなんだぜ。
というわけで、まあ先が長そうですが。気長についていく事にします。
どうせなら、このユニコーンが、また宇宙世紀ガンダムの世界を広げる橋頭堡になれれば良いですね。ガンダムの宇宙世紀の年表もだいぶ埋まって来ちゃったんで、そろそろ逆シャア以降の未開拓部分で新しいガンダム出来る素地を作っておかないと(笑)。
そういう意味で期待しておりますよ。