機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)第四巻
機動戦士ガンダムUC (4) パラオ攻略戦 (角川コミックス・エース 189-5)
- 作者: 矢立肇,福井晴敏,富野由悠季
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/04/26
- メディア: コミック
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4巻を読了。
前回、3巻についてかなり辛い事をいろいろ書いたわけなのですが、4巻を読んで、この作品の評価が私の中で少し上方修正されました。
特に。私が福井氏の作品で支持するところがあるとすれば、それは戦っている当の兵士たちだけではなく、それを送り出している人たちにまでしっかりと目を向けている事です。
ただ戦場を描いて、戦争という「非日常」に酔うだけではなく、それを支える家族や一般市民へもちゃんと視線を向けていること、それゆえに作品世界に深さが出てくるんですね。
私が結構前に『Twelve.Y.O』を読んだ時に感動し、また「この話になら乗ってもいい」と思うことが出来たのも、こういう視点があったからでした。
少なくとも、『MSIGLOO』のような「単に戦場でのドラマで感動したい」という以上の、テーマを持ってガンダムに向き合いたいなら、こうした視点も持つ必要がどうしてもあるでしょうしね。
で。
リディとオードリーが地球へ行くのをバナージが送り出すシーン。
オードリーの気持ちを問いただすセリフはカッコよかった。ようやくバナージが主人公になったなぁ、という感じ……なのですが、その後の「男と見込んだ」がね。福井氏的にはこれは最高級に燃えるセリフなんだろうなぁと思いつつ、私はちょっとこの言葉では燃えられなかったなぁ。まぁこれは単に私の感性がたまたま合わなかったんですが。
そんな事もありつつ、この巻後半での場面は全般的に面白かったです。
まあでも、描写のしすぎで少しテンポを崩してるのかなぁ、という部分も感じたんで、そこが玉に瑕な感じ。
ネェル・アーガマがハイパーメガ粒子砲を小惑星基地「パラオ」に撃つんですけれども。撃ってから、まずネェル・アーガマに向かってた射線上の敵機が撃墜される、それがどう爆発したかが詳細に描写され。さらに射線上にいたパラオ近くの機体が爆発する様子が、また5〜6行くらいの長さで描写され、さらにパラオ表面のガザCが爆発して、それから……みたいな段取りで進んでいくですね。
けど、ここは勢いが欲しいシーンな気がするので、射線上のMSの爆発とかは全部まとめて1〜2行で良いよね、とか思ったり。私が書き手だったらそうするなぁ、と思いながら読んでました。
総合的には、良かったシーンだと思うんですけどねぇ。
そして、問題のマリーダさん。
まぁ、ええとね。ガンダムファンサイト時代の私を知ってる人はご存知でしょうが、私はエルピー・プルには一家言あります(えぇ
ていうか自分の脳内プルを救済するために、原稿用紙800枚超の長編書いた男ですよ。
自己紹介はこの辺にしとこうか(誰
まあそういうわけで、何と言うか、マリーダの過去に関しては痛々しいなぁっていう感じで読んでいました。
けど何故か、不思議と、感情的に盛り上がってこなかったんだな。プルとミハルと五飛という名前は聞いただけで血圧が上がるという、この私がですよ(何
思うに。マリーダの悲哀・悲劇の描写って、どっちかっていうとプルクローンのそれじゃない感じがするんですね。あれは古典的というか、いわゆる普通の「人造少女」「戦闘少女」の悲哀でしょう。プルっていうよりは、綾波レイ的というか。
プルって確かにジュドーにべったりくっついたりしてたけれど、「マスター」って呼んでその存在に依存してる、っていうキャラじゃなかったよね。むしろパフェ食わせろとか我がまま言い放題だったわけで。プルツーですら、グレミーに対してあんな献身的で殊勝じゃなかったよね?
プルっていうキャラクターの本質は(そして『ガンダムZZ』という作品そのものの本質も)寂寥感、さびしいっていう気持ちですよ。人恋しいっていう。
プルはエルやルーに対しては我がまま放題でケンカしたりしてるけれど、マサイ・ンガバという、1話限りの脇役キャラの寂しさには急に、敏感すぎるくらい敏感に反応して涙を流すんだよね。寂寥感にはすごく過敏なんです。
そこを押さえないと、プルはプルらしくならないんだと思うんですよ。だから私はマリーダにそこまで入れ込まなかったなぁ。
まぁこれも、福井氏なりのプルって事なんでしょうが。
とりあえず彼女も生き残ったみたいですけど。どう処理してくれるのか。それなりには気になります。
そんなところで。続きも読みますよっと。