ランダム


ランダム―数学における偶然と秩序

ランダム―数学における偶然と秩序


 実は確率論というか、「ランダム」という言葉に昔から妙に関心がありまして。
 岩波文庫ラプラスの確率論の本とか意味もなく読んでた事もあったんですが。


 そんなわけで、気になったので衝動買いしたのでした。数学関係の読み物ですね。
 たとえば、コンピューターには、ランダムな数を出力する乱数みたいなのがあるわけじゃないですか。プログラミングとかしている人なら使ったことあるのかなとも思いますが、乱数発生機とか、コードで「x=rand」とかいう形でランダムな数を出力させる事もあると思います。
 けど……よくよく考えてみると、命じられたことしかできないハズのコンピュータが、「無作為に数を選んで来る」という作業をどうやってやってるんだろう? とね。それがちょっと気になったりして。
 それで手に取ってみたわけですよ。


 で、読んでみたんですけど。
 とりあえず先にこれだけは書かせてくれ。


 誤字脱字多すぎ。
 私の読書人生でも、こんなに酷いのは初めてでしたよ。10ページ平均で2〜3ヵ所は必ず誤字脱字があるくらいの頻度。特に脱字がひどい。
 しかも数学の本で、結構難解なわけですよ。で、○○をkとして、k=なんとか、とか、そんな感じで文字や記号がたくさん出てくるわけです。
 なのに、その文字が脱字してるとかね。それじゃ分かんねーだろと(笑)。
 脱字があっても、周囲の文意からなんとなく予想して意味を補って読むってことは普段ならそりゃ出来ますが、文系人間が数学の読み物読んでて、理解もチンプンカンプンな状態じゃどうしようもない。お手上げです。


 とにかくこれはひどい。プロの仕事とは思えないね。青土社ってこんな半端な仕事する出版社だったっけ? とか思ったくらい。
 ちょっと立腹なワタシ。


 まあでも、内容はけっこう面白かったです。ランダムっていうと我々は、まあ箱の中に入ってるボールを無作為に取り出すとか、コインを投げて裏か表かとか、ともあれ咄嗟にその意味はとれる。どういう事象を指す言葉なのかすぐにイメージできる。
 けどそれを数学的な言葉で捉えようとすると、やっぱり大変なんですねぇ。
 ランダムとは法則性がないこと。けど、本当に法則性がないのか? という疑問が立てられて、それを検証するための方法がいろいろ考えられたり。
 ぱっと見では法則が無さそうに見えても、本当にそうなのかは分からないですしね。実はものすごく遠大な法則から出て来てるからそう見えるだけかも。


 で、最初に掲げた疑問ですが、その答えが得られただけでも収穫だったと思います。コンピューターが出す乱数は、ちゃんとそれを生み出す数式がやっぱりあったんですね。


χn=(αχn−1+с)modχ  
※n、およびn−1は小さい字。ブログでは表示できないですけど。


 χ、α、c、にはそれぞれ整数が入ると。modってのは私には上手く説明できないのでこの本読んで(ぇ
 まあとにかく、こんな感じの数式ではじき出される数なんですね。数式によって出力されてるということは、この数式を把握していれば次にどんな数字が出てくるのか予想できるので、そういう意味では本当の意味での無作為、ランダムではない。疑似ランダムであると。
 ただ、この数式によって出力される数が、先人の考え出した、ランダムであるかどうかを測定するいろいろな試験法にパスするので、まあこれをランダムな数列を生み出す方法として採用している、というわけなのでした。


 なので、ゲームとかでランダム機能とか使ってて、なんかランダムっていう割には偏りがあるなぁ、っていうケースも比較的あると思いますが、結局プログラム上の擬似ランダムなわけなので、そういう事もあるんだな、という事でしょうかね。


 で。
 結局こういう話題だと、最終的には複雑系の領域に足を踏み入れてしまうらしく、終盤ではおなじみのスチュアート・カウフマン、サンタフェ研究所の名前が出てくるのでした。秩序と無秩序の間、カオスの縁。そこから生じる創発という話にさらっと触れて、この本の結びと。
 そんな感じでした。


 んー、つくづく訳と誤字脱字が惜しい本でした。分からないながらに結構面白かったのに。