奇想の江戸挿絵


奇想の江戸挿絵  (集英社新書ヴィジュアル版)

奇想の江戸挿絵 (集英社新書ヴィジュアル版)


 江戸時代の読本、合巻などの挿絵を紹介する新書。葛飾北斎や歌川豊国を中心に。


 非常に面白かったです。江戸時代の選りすぐりの奇想に気軽に触れられて。今までに見たことのない表現、見たことのない画面を見せられるとやっぱり興奮しますね。まあアマチュアなりに創作をやってる身として、考えもしなかった表現法というのはなかなか刺激的。嵐を表現するのに、画面全体にナナメの白い帯と複数の細い斜線をざーっと入れてしまうとか、その思い切りの良さに始終おどろかされっぱなしでした。大胆不敵。
 特に、著者も言ってますけど、やっぱり葛飾北斎ってすごいね。私は今まで浮世絵しか知らなかったけど、物語に即した挿絵でも、うまく話の筋を生かしつつ、手の込んだ手法で場面を盛り上げる手腕がすごくて純粋に感動しました。


 まあ、全体的に、元の話が話だけに、生首など画題がわりとグロ方面なので若干読者を選ぶかも知れませんが。
 平和な時代ほど、そういう過激な話が受けたんでしょうね。そういうところは現代ともあまり変わりません。


 「妖怪を描く」の章も、妖怪マニアとして非常に楽しく読みました。いくつか石燕の画図百鬼夜行で見たようなのも混じってたりして。あと、鼻が伸びる妖怪がツボにハマって大変でした(笑)。やる気ない絵柄ともマッチしてて思わず噴いてしまった。


 うん、やっぱり江戸時代の読本とか、その辺のいわゆる戯作は面白いですね。多分、今のエンタメ小説の現状とすごく似た時期だったと思うのです。壮大だったりファンタジックだったり伝奇っぽかったりする作品が跋扈してて、空想の自由度が高い状況の中で商業出版でガンガン切磋琢磨してたという。
 正直、ライトノベルの業界ではもっと江戸戯作を参考にした作品とか出てきても良いと思うんだけどなぁ。時代の感性としても近いと思うし、厨二病的な目で見てもおいしい作品がたくさんあると思うのです(笑)。
 ネーミングとかもね。「女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)」とか、なかなか出てくるフレーズじゃないよ?w
 その辺も含めて、もしマンネリに苦しんでるライトノベル作家さんがいたら、江戸戯作を研究してみるのを強く勧めるですよ。
 いや、まあ私がやれば良いんですけどね。