四畳半神話体系


四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)


 先日読んだ『夜は短し歩けよ乙女』が面白かったので、引き続いて読んでみた。


『夜は短し〜』が、万人向けのふわふわした、ファンタジー調の口当たりのいい話だったので、そういう感じの話を想像して手に取ったら、いやぁヒドい話でした(笑)。主人公も、脇役も、道具立ても、話の筋も、全部ひどい。これはちょっと女性には勧めにくいなぁw



 話の構成は、けっこう手が込んでいます。連作短編としてよく趣向が凝らされていて、そこはさすがと思ったのですが。さりげない手つきでテーマにつながる伏線を入れておいて、最終話で種明かしと共にテーマを提示する段取りも非常に上手い。
 ……のですが、その辺は文庫版解説であらかた語られてしまっているので、私が感想としてここに書くことといえば、それ以外の「ヒドい」部分ばかり(笑)。
 何というか、この主人公視点の内面語りの鬱屈具合、ルサンチマン具合の妙なリアルさがね、なまじ身に覚えがないでもないだけに痛々しいったら(ぇ



 とりあえず、『夜は短し〜』とキャスティング、登場人物が一部重なっているんですね。発表順で言うと逆なのかな。まさかまた樋口さんに会えると思ってなかったので、けっこう嬉しかったりもした。また、こういうのは前に読んだ作品を読み返して、いろいろ突き合わせたりするのも楽しくて良い趣向ですね。


 基本的にはパラレルワールドというか、主人公が4つの選択肢のどれを選んだか、から始まる分岐を描いて行くわけですけど、そこのさじ加減もさすがと思わされました。1話から3話まで、実は話の最初も最後も同じなわけですが、そんな中で巧妙に道具立てなどを使い回しつつ読者を引っ張っていくし。さりげない仕掛けも面白い。
 作中出てくるぬいぐるみ、「もちくま」の移動経路が、4話→3話→2話→1話の順にたどれる事に気づいた時は唸ってしまいました。上手いなぁ。
 しかしそれ以外の、ラブドールとかその辺の道具立てのヒドさがやはり目についてしまう(笑)。



 そんなわけで。作品の出来の良さ、読者にとっての敷居の低さという意味では『夜は短し〜』の方が総合的に良い出来だと思います。が、ギミックの多さとか、作品の凝り具合の面でこの『四畳半神話体系』も面白くありました。連作短編とか書くなら、これくらい色々仕込みたいよなぁ、みたいな。


 そんな感じ。