濹東綺譚
- 作者: 永井荷風
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1951
- メディア: 文庫
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何故か唐突にブンガクするワタシ(何
まぁ、先日から東京をテーマに読書していたわけですが、そこで永井荷風の名を何度か見かけたせいなんですが。で、ちょうどこれだけたまたま積ん読してたのを思い出して、読んでみた次第。
とはいえ、なんせ普段はエンタメ小説しか読まないもので、感覚が全然文学作品を読む感覚になってませんでした。長らくラノベ読みだったしねぇ。
なので、「おお!? 主人公が路地裏歩くだけで場面が終わった! 何も起こってねぇ!?」とか、そんなどうでもいい事で驚きながら読む(笑)。
話は、隅田川近くの私娼街で、ちょっと古風なお雪さんという人と知り合って情を交わすも、結局はフェードアウトするみたいに別れてそのまま、という内容。
しかしなかなか面白かったのですよね。登場人物二人がなんとなく部屋でお茶いれたり髪すいたり、ごく普通の日常の風景の中で言葉を交わしてるだけなんだけど、そこにひっそりと二人の関係というのが浮き出てきて。情味というか、たしかに「味」としかたとえ様のないものが行間にあって。けっこう楽しめました。
実際のところ、文体自体についてことさら「名文だなぁ」とは思わなかったのですけどね。まぁ私の感性が多分に中二病なせいもあるだろうけど(笑)。
内容については……どうなんでしょうね。
私は以前も書いたように、昔を懐かしんで、それだけを根拠に「今はダメだ」っていうような姿勢には反対だよというスタンスではあり。けれど、荷風に関してはこうして表明していく事で、結果的に失われず後世に残ったものもあったんでしょうからねぇ、難しいところでもあります。
あまり詳しくないけど、この作品でちらっと出てくる荷風の女性観が攻撃される事もあるとかないとか。ただそれって、この作中での「わたくし」の煮え切らない態度とも表裏一体なんですよね、多分。まぁ主人公が老齢だったって事もあるだろうし、一概にどうこうというのは言いにくいのですが。
まぁ、ラスト読んで、病気の見舞いにくらい行ってやれよ、とは思ったけど(笑)。
いわゆるフェミニズム的な視点で、この作品の主人公を非難するのは簡単だし、実際現在の視点から見たら結構ひどい事も書いてるんですけどね。ただ、そこで正しさを強調するあまり、これら過去の人々がどう感じたかとか、どういうメッセージを残そうとしたかとか、そうしたものを丸ごと「意味の分からないもの」にしてしまったら、それはそれで問題じゃないかとも思ったり。
こうしたお雪みたいな女性を取り巻く論理というのは、いろいろ乱暴で一方的で間違ってるかもしれないけれど、だからってそこにスイッチする回路、接続して意味を読み取る感覚そのものを失ってしまったら、結果的にそういう場で生きていた人たち(女性たち)を丸ごと消し去ってしまう事にもなる。まぁ京極の『絡新婦の理』で話されてたことそのまんまですが。
まぁ要するに、私はこの時代の私娼窟とか、そういう感覚が全然分からないって事なんですが。そしてそれゆえに、この作品が描きだそうとした空気についてもその半分以上を取り逃してるんだよな、と思いながら読んだって事で。
……うーん、なんか見当外れなこと書いた気がする。
なんかブンガク作品の感想って難しいぜ(何を今さら