魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st


 というわけで、まぁ見たわけですが。
 うん、まぁ、何というか。



 ヒドイハナシダナー(ぇ


 見終わって、思わず深く納得しました。なるほどそれで、上映前に「児童虐待を見たらご一報ください」の政府広報が流れたんですね(違



 ……冗談はともかく。
 まぁでも、この作品が何故ああまで多くのファンを引き付けたのか、その理由は分かった気がしました。私自身、クライマックスではけっこう盛り上がってしまった。少なくとも、ただの萌えアニメといって片づけるには、少々重いテーマを扱ってはいるのかなと感じましたし。



 しかしその前にお小言を。
 主人公は小学三年生の女の子、それが魔法少女で、それでいて扱っている魔法の杖が英語でペラペラしゃべる上に、どう考えても重火器としか思えないギミックでガッションガッション金属音を立てて変形したり、大火力を放った後には蒸気を噴き出したりしているという。そのアンバランスさはやっぱり気になったのでした。つまり、メカと美少女というオタクの男の子の好きな組み合わせが、すごい歪な感じで組み合わさってるのが、やっぱりちょっと嫌な感じがする部分ではある。
 ていうか、小学三年が、吹き飛ばされてビル貫通して地面にめり込んだりしてちゃダメだろうという(笑)。


 白状すると私はこの映画を見て結構感動したんだけれど、しかしオタクコンテンツならではの「歪な」ところがやっぱり気にもなるわけです。物語そのものは真摯なのに、「本来は小さい女の子向けだった魔法少女のジャンルをオタク男子が横から奪い取ってる」気まずさをそのまま継承しているので、映画序盤の入口のところがツライ感じはします。要するに、アンバランスなんだな。目標地点は結構いいところ狙ってるのに、スタートする方向だけなんか逆向いてねぇ? みたいな。
 まぁ、中盤あたりまで見慣れていくうちに、その違和感も段々薄れては来るんですが。



 で、物語についてですが。
 これはもう、フェイト・テスタロッサとその母親との親子の物語、というのに尽きる。
 特に、あの母親が最後まで救われない展開には怨嗟すら感じます。というか、母親の根城(劇中では庭と呼ばれてましたっけ)が悪そうすぎる(笑)。



 ものすごく、死ぬほど野暮な読解ですけど……劇中の「アリシアテスタロッサ」を「理想の我が子」に、そして「フェイト・テスタロッサ」を「現実の我が子」に置き換えてみた時に、あの話を見て身につまされてしまう視聴者が一定以上いたのかな、という風に思うとなかなか感慨深いわけで(ぇ
 そういう意味で、この作品を普通の女の子向け作品と勘違いして、親子連れで入ってしまった客とか(私が見た時にも一組いたようですが)、むしろ見ている親が居づらい気分になったりするんじゃないだろうか、とも思ったり。考えすぎかね。



 まぁ、だからって視聴者が、自分をフェイトに照らして見るのは若干都合がよすぎるのですが。けれどしかし、最後にフェイトが復活して戦闘に加わって来るシーンは、やっぱり盛り上がるわけですよ。そこは感動するんだな。
 考え得る限りで最悪の裏切られ方をして、どん底の境遇に突き落とされて、けどそれでも「私の物語は始まってすらいない」といって復活できるのは、つまりゼロ年代の強さなんだよな、と。いやまぁ、最近ちょっとまた、宇野常寛と『ゼロ年代の想像力』関連でとある人と議論したりしてたんで、またそちらに引き寄せて述べてみたりするわけですが。



 境遇に、世界に、親に、社会に裏切られて、その結果「引きこもる」90年代の想像力に対して、「境遇は最悪だけど、それでもそこから僕らはスタートを切れるし、そこからどこへでも行ける」という事に気付くのがゼロ年代の想像力なんだよな、っていうこと。それは決断主義化して、バトルロワイヤルの暴力性の問題を孕んだりもするけれど、しかしどうあれ、私たちはスタートを切る事はできる。


 たとえば家庭にテスタロッサ家ほどの問題を抱えていなくても、たとえば環境問題や経済や政治など、新しい世代を取り巻く酷い境遇には枚挙に暇がなくて。しかし、確かにそれで最悪の状況にまで突き落とされたけれど、そんなどん底からでさえ「物語」を始める事はできる、という決意にシンクロするからこそ、私自身感動したんだろうなと。
 それでこそゼロ年代の作品、ってわけです。


 またそうして立ちあがったからこそ、改めて母親と対面したフェイトの口から出る言葉も恨み事じゃないんですよね。



 ……あー、なんか野暮天全開な感想だなぁ。やっぱり感動を言葉にするのって何だか間が抜けている。


 ちなみに、一番感動したのは、フェイトの母親が退場する間際。「気付くのが遅すぎる……」と呟くところでした。何という残酷な脚本。



 ……そんなわけで。なんだかんだで、非常に楽しんだのでした。アラを探せばきりがないけど、いいところもちゃんとある作品だったので。お金を払った価値はありました。


 まぁ、あと言う事があるとすれば……。


 フェレットが二本足で立ち上がって、片腕突き出してバリア張るシーンで必ず噴くんだが、ユーノ君そのポーズやめてくれないか(笑)。


 そんなとこ。