月世界へ行く
- 作者: ジュール・ヴェルヌ,江口清
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/09/10
- メディア: 文庫
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松岡正剛『ルナティックス』にちらっと出てきた挿話で興味が惹かれて、買ってみた本。
SF小説の元祖と言ってしまって良いのかな、日本がようやく明治維新を迎えた頃に書かれたジュール・ヴェルヌの作品。
これが、なかなか面白かったのでした。
もちろん、現在の科学知識に照らしてみれば、変なところはいろいろあったりもするわけです。宇宙空間で、特に宇宙服とかもつけずに、砲弾(ロケットではない)の外部との扉を開いてゴミとか捨てたりしてるし(笑)。
他にもエーテルの話が出てきたりして、まぁ科学的な事実誤認は私程度の素養の人間にも散見されます。けどね、だから楽しめないと言う事はない。というか、そういう風に読むべきではないのでしょうね。こういうのは、同時代人の目線で読んだ方が面白いのだし。
何より、作中人物の魅力が読んでいて嬉しかったところでした。特にミシェル・アルダン氏がもう、可愛すぎる(笑)。実質、この人物がいたから作中の月旅行も上手くいったのだろうし、また読者にとってもこの人がいるから楽しんで読めているところ。
全体的に憎めなくて、明るい雰囲気が作品全体に漂っているのが印象的でした。なるほど、科学がバラ色だった頃だったんだな、という空気感があり、その辺も楽しみどころなのかも。
最後のオチもひたすら愉快でした。科学も、なんでもそうですけど、ハンドメイドな感触が残っている時が一番楽しい。月へ行く大砲にしても、月旅行そのものも、そして勇敢な月旅行者を救助する過程まで、全体にどこかハンドメイドな感触があって。そういう幸福な空気感が良かったです。
ともあれ、とても楽しみました。これはお勧めかも。