今昔物語集 本朝部1


今昔物語集 (1) (東洋文庫 (80))

今昔物語集 (1) (東洋文庫 (80))


 去年の神保町古本まつりで買ったセットに取り掛かって、最初の一冊。
 なにはともあれ、基本文献を少しずつでも押さえていこうという次第。本当なら原文に取り組むべきなのですが、時間的にも資金的にも制約が厳しいので。とりあえずアウトラインを頭にいれておいて、必要になった時には図書館にでも出向いて補完しようという。


 とりあえず本朝部の最初は仏教編という事で、日本への仏教伝来から後を、逸話で紹介していく感じなのですが。
 読み始めて驚いたのは、情報密度が段違いだ、という事で。以前、『日本霊異記』を読んだ時とは全然違う感触でした。登場する人物について、出身地、僧の場合は俗姓、誰に師事したか、どこの寺の僧か、などのプロフィールがちゃんと記載されている。聖徳太子空海などなどの有名な人物はもちろんのこと、マイナーなエピソードでもある程度そういう情報を入れてあって、『今昔物語集』の分量を考えると、これはとんでもないエネルギーが費やされているらしく思えます。
 また、面白い事に、ただエピソードを羅列してるだけではなくて、地味に伏線を張って後で回収したりもしてるんですよ(笑)。巻十一の第九話が空海に関する話なのですが、唐に渡った空海が色々と為した事績の中に混じって、日本に向けて三鈷という仏具を投げた、という一節が入ります。投げたというだけで、それがどうなったとは記さないままその話は終わり。
 で、間に円珍、円仁、光明皇后など色々な人のエピソードを語った話が入って、第二十五話、空海高野山を開いたという話で、いきなり「唐にいる時に投げた三鈷を探しに行こう」と始まる(笑)。そんなことすっかり忘れて読み進めていたので、ビックリしてしまいました。
 こういう構成を見ても、どうもただの説話集ではないというか、この説話集を作った作者というのはタダ者じゃないなというのが感じられるわけで。一体何者だったんでしょうねぇ……。


 その他、いろいろと面白いところがありましたが、いずれ自分用ウィキの方に。
 とりあえず、後半の猛烈な法華経プッシュぶりには若干食傷気味です(笑)。でも多分この調子でまだしばらく続くのだろうな……間に別な本を挟んで気分をリフレッシュしますw
 そんなところで。