機動戦士クロスボーンガンダム ゴースト
機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト (1) (カドカワコミックス・エース)
- 作者: 長谷川裕一,矢立肇,富野由悠季
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/05/25
- メディア: コミック
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6月3日読了。
個人的に『鋼鉄の七人』はちょっとしっくり来なかった、という話は以前このブログに書きましたが、それでもクロスボーンガンダムと名のつくものは、やはり買う。好きだからね。
で、読み始めてみたら、なんだかんだで面白く読み進められたりするのでした。
仕事帰りの電車の中で読んでたんですけど、いきなりサンドージュが登場したところで、思わず周囲の目も忘れて笑っちゃったよ。
長谷川先生ってやっぱり、本来の意味でのSFというか、センスオブワンダー、異質な感覚を描くのが上手い方だと思うわけですけど。それが、このクロスボーンガンダムのシリーズでの、地球とは感性の違う木製圏の住人が作った異形のマシーンたちを描き出すのにすごく活かされてたように思えるわけですが。
一方で、『Vガンダム』のザンスカールのMSっていうのは宇宙世紀ガンダムのメカデザインの歴史の中でも飛び切りのバッドテイストで、知らない人に見せても多分ガンダムシリーズに登場するメカだって信じてもらえないような代物ばかりなわけです。
特にサンドージュは浮いていたわけなのですが。
この二つの方向性がリンクしたというか、長谷川先生の描くサンドージュがね、もう凄いハマっていて、あまりにもピッタリだったので思わず頬が緩んでしまったわけです(笑)。
クロスボーンガンダムの登場シーンとも合わせて、うん、すごく良かった。
フォントの戦闘中の機転の描写なども含めて、純粋に楽しめました。第一巻だけの印象を単純比較したら、多分鋼鉄の七人よりすんなり腑に落ちた。
これは今後の展開にも期待。どう料理するか楽しみなネタは他にも色々ありますからね、バイクとかバイクとかバイクとか(ぇ
というわけで、全体的に満足なんだけれども、あえて気になった所を挙げるとすれば……エンジェル・ハイロゥが、この作中の描かれ方だと、ただの足止め兵器みたいに扱われてる事でしょうかね。
仮にフォントの言うとおり、あれだけの巨大兵器で長期間の継戦が不可能だったとしても。それでもザンスカール帝国は、フォンセ・カガチは、あのエンジェル・ハイロゥ単体を決め手として作戦を進めてたんじゃないかと私は思います。それがザンスカールの、そしてVガンダムの狂気だ。
私は長谷川先生がこれから描くVガンダムの世界に期待しているけれども、それでも富野監督が精神病一歩手前まで行った状態で描いた、あの狂気にスイッチできるという期待はあんまりしていない。
Vガンダムで描かれた、多種多様、バラエティあふれる狂気の見本市のような世界については、私は半ば以上本気で、ドストエフスキーとかあの辺の世界文学にも太刀打ちできるくらい凄い表現だと思ってるわけです。自己愛と自己憐憫のカテジナの狂気、真面目すぎるために分不相応な背伸びをし過ぎるクロノクルの狂気、下克上の野望を抱いてしまう中間管理職タシロ・ヴァゴの狂気、電波系なファラ・グリフォンの狂気、自分の趣味を走らせすぎた末のドゥカー・イクの狂気、母親をやりたいルペ・シノの狂気、使命感のあまり少年ウッソに悲劇が次々起こっても配慮できないリガ・ミリティアの老人たちの狂気、純真すぎる子供としてのシャクティの狂気……とにかく、ありとあらゆる狂気が入り混じって、画面を怨嗟で埋め尽くすような迫力を、Vガンダムの後半の展開は持っていました。
あれにまともにスイッチするのは、並みの精神力じゃ無理だろうという気がします。特に、長谷川先生の持ち味はそういう方向とは多分逆なので。
まあでも、この『クロスボーンガンダムゴースト』については、長谷川先生のやりたい事をやれば、良い作品になるんじゃないかな、という気はします。
続刊の楽しみな漫画が増えました。楽しい事です。