城の日本史


城の日本史 (講談社学術文庫)

城の日本史 (講談社学術文庫)


 6月15日読了。
 今回の滋賀県旅行の旅の友に選んだ一冊でした。安土城の城跡を見るにあたって、やっぱり城郭の見方の基本的なところだけでも頭に入れていければなと思ったり思わなかったり。


 序文を読んだ時点で、ああこれは当たりを引いたな、という気分でした。城というと戦の際の拠点という視点ばかりが強調されるけれど、それは古く中国では町そのものでもあったし、近世にあっては行政府でもあったし、また文化装置でもあった。そういう多様な視点から城郭史を述べるという宣言があったからです。
 やはり、こういう視野の広い本を読むのは楽しい。


 城郭に関する知識については、ちょっと漫画で読んだ程度だったんですが、これもなかなか奥が深いようで。
 細かな知識については、ただ感心しながら読んでいたわけですが。やはり織田信長安土城が一つのエポックであったことは、改めて復習できた感じです。
 と同時に、一番驚いたことの一つは、豊臣秀吉御土居でしょうか。秀吉の事績ってほとんど勉強してなかったので、秀吉が京の都を土塁で取り囲んで、聚楽第と合わせて中国的な意味での「都城」に再構成するつもりだったというのはなかなか鮮烈でした。
 信長、秀吉、家康と天下統一を成し遂げて行った「天下人」たちにとって、やはり千年にわたって王権を保ってきた「京都」をどうするか、という問題意識はあったのでしょうし。信長は旧二条城を作ったりはしましたが、この問題にそこまで踏み込めてはいないのかなという気はします(が、日吉大社比叡山を徹底的に叩く事で、当時日吉神人が握っていた京都の土倉・酒屋への支配=経済を解放しつつ、安土に楽市楽座を敷く事で商業による新しい都を構想していたのかな、という夢想はできるかな)、秀吉は京都を土塁で囲んで、言ってしまえば都をそのまま改造してしまうという発想だったのかと。
 一方、家康は辺鄙な場所にすぎなかった江戸を、新しい千年の都にするべく作り上げていったわけですね。比叡山に対応する東叡山寛永寺を置いたりして、私(と宗像教授w)の大好きな天海僧正と共に、江戸を新しい都にする構想だったのかなと。



 ともあれ、いろんな方向から思考を刺激してくれる、良い本だと思いました。同じ著者が安土城について1冊本を書いているらしいので、いずれそれも読みたいかな、とか。
 そんな。