江戸の教養



 角川から出ている文庫。そんなにヘビーなものではなく、駅構内ででも売ってそうな雑学本に近いシリーズですね。
 普段あまり手に取らないタイプの本ではあるんですが、さしあたってのアウトラインを大掴みにするには案外便利だったり。


 で、特にこの本の後半、「江戸の学び」の項目を楽しみに読んだのですが。
 ただ少し想定してたのと違った部分もありまして。上で紹介した『江戸時代の科学技術』のように、この時代の知識水準の上限というか、自然科学や人文科学がどういうものだったのかが知りたかったのですが、この本で触れられてるのはどちらかというと実学や、読み書きそろばんなどの基礎教養が中心でした。
 まぁ、これはこれで有用ではあったのですが。
 何というか、「学び」という言葉で連想する内容が、世間一般とずれてきてるのかもな(笑)。



 面白かったのは、徳川吉宗についての項目でした。
 『暴れん坊将軍』への愛着を差し引いても(笑)、けっこう昔から吉宗の事は気になっていまして。高校時代くらいに一冊、吉宗の評伝みたいなのを読んだことがあったかな。
 ただ、改めて見てみると、やっぱりこの人面白いですね。同時代の儒学者や公家は、吉宗が当時の常識であり教養であった儒学の素養や、和歌の心得が全くないという事で蔑んですらいます。しかし一方で、徳川将軍の中で唯一、江戸城の将軍の住居スペース内に専用の書庫を設けていたという。法律においては明の法典を分析させ、将軍就任の翌年にはオランダ人に、博物学蘭学書の翻訳の打診をしたとか。いいなぁ、カッコいいw


 そして、『諸物類纂』(全362巻)という博物学の書籍を幕府官医に増補させ、諸国での呼び名の違いなどを集めて編集、出来上がったものは1514巻になったという(笑)。和綴じの本って構造上薄くなりはしますが、それにしても1500冊以上って。大蔵経じゃねぇんだから(笑)。



 そんな感じでした。思惑と違う内容の本であっても、大抵得る物はあるので読書は楽しい。
 とりあえず、他にもいっぱい未読本抱えてるのでなかなか進まないでしょうけど、引き続き江戸時代の知識水準などをのんびり探る方向の読書もしていければと思います。
 というわけで、いざ次の本へ。