蝉丸Pのつれづれ仏教講座
- 作者: 蝉丸P
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2012/06/15
- メディア: 単行本
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8月2日読了。
一応、そんなに熱心ではないものの蝉丸Pのネット檀家を自認しているので(ぇ 本を出したと聞いて買ってみました。
ニコニコ動画上で説法をしたり、クリスマスに散多菩薩の供養をしたりしてる、本職の阿闍梨による仏教解説の本。
まぁなんというか……「これはひどい」という内容(笑)。
誤解を与える前に補足すると、仏教理解についてはかなり広範かつ深く、また可能な限り公正な書き方を企図されていますし、著者の蝉丸Pはそこらの半端な僧侶じゃ足元にも及べないくらい勉強してる方です。原始仏教の誕生までの経緯を、アーリア人のインド亜大陸への侵入から説き起こせる仏教者は全体の何割いるのかという話で。そういう意味で、話されている内容は、仏教入門書として十分以上に信用おけるものだと思います。
それを、ネトゲにたとえたりアイマスにたとえたりしながら説明していくわけです。で、オタク方面の酸いも甘いもかみ分けている分、出てくるたとえがイチイチえげつなくて、これはひどい、と(笑)。
読み物としては大変おもしろく、ネットスラングやオタク用語でニヤニヤさせられてるうちに仏教の色んな側面に親しめるので、暇つぶしに読んでみたら案外思わぬ時に雑学として役立ったり、物を考える時の参考になったりする、という感じなので、わりとお得な本としてまとまっているのではないかと思いますが。
ただ、卑近なたとえでその場では呑み込めたようでも、それで仏教思想が頭に入っているかというと、数か月もしたら忘れてるくらいになっている可能性も高い気がします。やはりそこは、するっと頭に入ったものはするっと出ていくわけで、本格的に勉強するなら、結局は巻末の参考文献などから次へ行かない事には厳しいのかなと。そんな印象。
ただ、著者やその後輩が日本仏教に持っている問題・危機意識はなかなか重いよな、とは思います。そこに触れられるという意味で、この本は貴重かも知れない。
先日、新聞で天台宗と真言宗のトップが初めて会談したという、その対話の内容が掲載されていましたが、はっきり言って、そこで説かれてる事はそこらのスピリチュアルな人たちが言ってる「ちょっといい話」と、ほとんど差別化されてないように読めて、日本仏教大丈夫かよ、と眉をひそめたりしていました。
現代において、「社会に向けて仏教だから言えること」っていうのをちゃんと構築し直していかないと、仏教の日本社会に対する影響力って今後もダダ下がりしていくんじゃないかと。
私が蝉丸Pが好きなのは、ネットスラングを使って砕けた姿勢ながら、「仏教だから言える事」をちゃんと発信しようとしているところなのです。
そんなわけで。
表紙から見開きから徹頭徹尾ふざけた本ですが(笑)、今の時代における仏教を考える意味では、意外と深く考えさせられる本だと思います。
追記。次はぜひ「蝉丸Pのつれづれ密教講座」とか書いてほしい(待て