ガンダムAGEアセム編を見たら普通に面白かった件


 大体、新作Gジェネをやろうかなと思い立って、発売1〜2か月前に、「じゃあしょうがない、新規参戦の作品を一応見ておくか」という動機で見てなかった近作ガンダムを見始めるというのが私のパターンでございまして。
 ガンダムAGEは第二話だけたまたま見る機会があったのですが、その時には「ああ、対象年齢から私は外れてそうだな」という印象を持ったので、その後特に情報を集めたりはしてませんでした(ただし、「強いられているんだ!」ネタは除くw)。
 まぁ、ちょうどバンダイチャンネルで無料で流れてるみたいだし、せっかくだから何話か見てみようかと。


 ……思ったのですが、ちょうど第一世代にあたるフリット編の無料放送が終わったタイミングだったもので。迷ったのですが、第二世代のアセム編から見始めたわけです。
 そしたら、最初の印象と違って、意外にも普通に面白かったという。



 結果的に、フリット編冒頭2話の後、アセム編を先に見たのが正解だった気がします。フリット編の冒頭が、「新兵器をその場で作っちゃう」AGEシステムのようないかにも低年齢向けアニメっぽい設定や、スーパーロボットの敵のような、完全にモンスターな敵などにより「子供向け」なアニメなのかと思わせられたわけなのですが、アセム編を見てみると、わりと普通に(良い意味で)「ガンダムしてる」のですね。
 それで、ようやく合点がいったのでした。この作品の狙いが、恐らく「ガンダムの歴史」「アニメの歴史」「現実の現代史」を三世代の主人公を通して実際に描く主旨なのだな、という事です。
 で、少なくとも私が現在見た限りの範囲(アセム編と、キオ編最初の2話)を見る限り、その手際が非常に良い。



 一例を挙げれば、敵組織である「ヴェイガン」の描き方です。
 前述の通り、当初、中に人が乗っているのかどうかも分からない、モンスター的な、あるいは『ゲッターロボ』の敵メカのような存在だったヴェイガンのメカが、やがて中に人が乗っていることが明かされ、アセム編に至って敵組織の司令官と主人公が知り合いとなり、地球側の企業や連邦軍内にヴェイガンに内通している者がいる事が明かされ、やがてキオ編に至って、普段は隣人として地球に潜伏していたヴェイガンが突然牙を剥いてくる、という風に変わってくる。
 これは、初期のロボットアニメで、「とりあえず敵は悪なのでやっつければ皆ハッピー」だった存在が、初代ガンダム以降、敵メカにも「中の人」がいて目的を持っている存在である、と描かれるようになり、やがて自分たちの暮らしの中に潜む「内部の敵」がクローズアップされてくるエンタメものの流れをなぞっています。
 さらに現実においても、二次大戦のドイツ(ナチス)のように「やっつければ無条件に皆ハッピー」な仮想敵が、冷戦中の東側諸国を経て、やがて顔も見えないしどこに潜んでいるか分からない「テロ組織」へと変わっていった流れをもなぞっています。



 こうした、「時代の移り変わりを反映する」というコンセプトが、主人公像、それを取り巻く家族像、連邦軍の描写、などなど様々な方面で描かれているわけですよ。
 しかもバランス感覚が良い。たとえばファースト世代にだけ過剰に肩入れしたり、逆にたとえば「アンチ・ニュータイプ思想」みたいなのをブチ上げようとして偏ったりという事もしてない。まだ全部見てないので断言はできませんが、結果的にガンダム史のまとめとしてかなり秀逸な流れを提示できてるんじゃないかという気がします。


 あと、これはフリット編をちゃんと見通してみないと何とも言えないのですが、この『ガンダムAGE』は、ニュータイプ幻想から本当の意味で脱却できた初めてのガンダムかもしれない、という気がしています。
 「ニュータイプ」という考え方自体の呪縛の解除というのは、『クロスボーンガンダム』でおおむね示されているというのが私の持論なのですが(詳細はこちらを参照)、しかしそれを描いた長谷川裕一氏も、『スカルハート』などではやっぱりニュータイプを何か「凄い存在ではある」という風に描くことをやめられないし。
 また最近のガンダムも同じで、『ガンダムSEED』なり『ガンダム00』なりにしても、なんだかんだで「普通の人肯定」みたいなメッセージとか、「リボンズ・アルマークみたいなのはダメでしょ」っていう否定の仕方はするにしても、結局コーディネイターにしても、イノベイターにしても、「基本的に一般人より能力的には優れてるし評価も上」っていう根幹の部分は踏襲してしまっている。
 ところが『ガンダムAGE』だと、ヴェイガンの司令官のゼハートだったと思いますが、この世界のニュータイプに相当する能力者「Xラウンダー」について、「ある意味で人類の退化でもある」というセリフを言わせるわけです。戦闘に特化している事で、人が獣に戻ったようなものだとか。
 これはね、ファーストガンダム原理主義者には絶対に言えないセリフだと思って感心したのです(笑)。


 AGE作中のアセムの時代では、連邦軍内にフリットが作ったパイロット適正を測定するプログラムがあり、そこでは「Xラウンダー適正」のような項目もあるわけです。
 この事は、すごい皮肉でなければなりません。だって、Xラウンダー適正って要するに、ゲームなんかで言うところの「ニュータイプレベル」ですよ?(笑)
 数値化してしまうという事は、比較する事ができてしまうという事です。NTレベルの大小によって、評価の上下が決まってしまう。実際、このXラウンダー適正の数値が低かった事で主人公のアセムは大いに悩む羽目に陥ります。
 某巨大掲示板シャア専用板で恐らく過去1000回以上繰り返されたであろう、「最強のニュータイプって誰よ?」とか「キラとアムロって戦ったらどっちが強いの?」とか、そういう強さ比較のための対象に、人類の革新であるはずの「ニュータイプ」という概念がいつの間にか堕してしまう。Zガンダム劇中で、ジェリド君がいみじくも「時代は変わったんだ、オールドタイプは失せろ!」と叫んで見せたように(笑)、ニュータイプというのがいつの間にか、なんか強さのためのステータスになっていってしまう。
 で、揚句の果てに、人類全部をニュータイプにしなきゃダメだって話になって、シャアさんがアクシズ落としによる大量虐殺を企図するまでに行きついてしまう。
 進化してない人類はダメなんだから、ニュータイプでないとダメなんだから、オールドタイプは滅ぼせっていうギレン・ザビの優生思想は、もうすぐそこなわけです。



 ガンダムAGEは、この問題を「あらかじめ予防線を張って回避した」初めてのガンダムじゃないかな、と。
 実際、ウルフ隊長の教えの下、Xラウンダーにならなくても強いスーパーパイロットをめざし、実現したアセム・アスノの成長には好感を持ちましたし、『クロスボーンガンダム』のトビア・アロナクスにもう一度出会えたような気がして、嬉しくもありました。
 で、私はまだ作中では出会ってないんだけど、アセム君宇宙海賊になって再登場するんでしょ? 「どう見てもクロスボーンガンダムだこれー!?」って機体に乗って(笑)。今から楽しみでしょうがないわけですw



 そんなわけで。正直、あちこちに分析できそうな道具立てが散らしてあるため、書いてるとキリがないのですが。とりあえず、全体を一通り見てみようと思います。
 バンダイチャンネルの有料会員にもなっちまったしな!!!



 そんなわけで、またいずれ、全体像を見渡してから、記事に起こす予定です。
 とりあえず。ガンダムAGEは思ったより良い作品だ、みんな早くこーい、ユニバース! ……と叫んで、本日は黙る事にしますw