機動戦士ガンダムUC(アニメ)4話まで


 見ました。はなはだ今さらではありますが、バンダイチャンネルで見られる4話まで。


 やはり、原作読んだ時に、福井晴敏氏のガンダム観というか、いくつか自分と合わない所がありまして、アニメ版の評判は知っていたものの、どうもイマイチ乗り気になれなかったのですが。そのあたりも踏ん切りつけさせてくれるあたり、Gジェネ新作は偉大です(私にとって)。


 で、見てみると非常にこれが良い仕事なのでありました。福井原作の気まずい所とかやりすぎな所を上手く緩和して、良い所は活かして、ドラマ部分もアクション部分も非常に見応えあるものにしてました。素朴に感動。これはもっと早く見ておくべきだったかも。
 そんなわけで、大変楽しんだわけです。以下、各話ごとに。



   Episode1 「ユニコーンの日」


機動戦士ガンダムUC(ユニコーン) 1 [DVD]

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 サイアム・ビストの声、永井一郎さんかいw
 この辺のネタ作りからして、よくやるよって感じです。
 話の展開は、まぁかなり駆け足ではあるんですが、福井原作2冊分を約1時間によくまとめたものだと。それに、バナージがオードリーを拾ってからガンダムに乗るまで、話の立ち上がり部分は少々かったるくなるかなと思ったりしたんですが、スピーディーな展開のおかげでそんなに退屈しませんでした。
 ていうかバナージ君、生身のマリーダさんを取っ組み合いで制しちゃったりして、いきなり普通に強いんですけど(笑)。
 そんなところも含めて、見ててダレないように要所要所に見せ場を織り込んでいく脚本もなかなかでした。


 MS戦については、まぁのっけから「これが噂に名高い、スタークジェガン一世一代の大立ち回りですか」としみじみ。量産MSをカッコ良く描く作品に悪い作品ないよ!(ぇ


 クシャトリヤの描き方も非常に力入ってて良かったです。サイコミュ搭載MSってこんなに怖かったか、と再認識。


 そんなわけで、全体的にほとんど文句のつけようのない、見事な映像化作品でした。そりゃあこんだけのもの作って、評判悪かったら嘘だわな、というくらい。
 で、続けて。



    Episode2 「赤い彗星


機動戦士ガンダムUC(ユニコーン) 2 [DVD]

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 クシャトリヤの、あのでかいバインダーをバターのように切り裂くビームサーベルすげぇ。


 で、フロンタルさんなんですけど。
 多分、原作読んでて一番私の気に障ったのがこの辺りなんですが(笑)、これもうまい具合に薄めてくれてたので、そんなに違和感をもたずに見る事ができました。この辺、池田秀一さんの演じ分けもあるのかなという気もしますが。だとしたらやっぱりプロって凄い。


 また、パラオ内で仮面を脱いだフロンタルの顔を見て、ますます、ちょっとした衝撃を感じたり。
 原作のフロンタルが仮面をしてるのは、やっぱり「ほれほれ、実はこれ本物のシャアかも知れないよ〜?」っていう安っぽい煽りを含んでるわけで、それを素直に踏襲するなら、映像でも仮面を外した顔をわざと映さないとか、そういう演出になると思うんですけど。顔がばっちり映るんですよね、実際には。
 しかもそれが、襟足の長い髪とも相まって、シャアを思わせるというよりは、もっと胡散臭い何か、という感じなのです(笑)。もちろん、フロンタルの時代がかった貴族趣味の服装や、背景のやはり時代がかった部屋の内装なんかも含めて、シャアとは決定的に違う、もっと歪な何か、という印象になってる。
 そこがすごく面白かったのでした。こうした演出によって、フル・フロンタルというキャラが「シャアのコピー」というだけの存在ではなくなって、このキャラならではの存在感を放ち始めるからです。


 考えてみれば、「今の自分は器だ」と言うような潔さはシャアにはないんですよね。海千山千の連邦軍特務部隊と交渉して逆にやり込めるとか、出資者があてがった時代錯誤な内装の屋敷を使って平気でいるとか、そういうセンスはシャアにはなかったわけです。
 また、アンジェロのような熱烈な自分の信者を近くに置くのも、シャアだったら絶対嫌がったはずです(笑)。クワトロを名乗ってた頃、シャアの名前から徹底して逃げ回ってたくらい自分が祭り上げられるの嫌な人ですから。
 Z時代、ミネバが偏見に満ちた育てられ方しているのを見て、大事な交渉の場なのに取り乱したり。あるいは逆シャアで欺瞞にみちた政治交渉をした後に「私はアコギな事をしている」と葛藤してみたり。部隊を鼓舞する演説をしたあと「これでは道化だよ」とボヤいたり。そういうシャアの人間的な揺れの部分がフロンタルには見られない。
 これが、なんとも気味が悪いわけです。シャアの実力と政治力・影響力を持って、しかも内面はガトーやエギーユ・デラーズのような確信犯。これってある意味、ガンダム史上最もタチが悪い(笑)。
 それだけに、むしろ作品全体を引き締める事ができている気がします。悪役に存在感がある作品って、やっぱり強いので。



 そんなわけで、まさか私がフル・フロンタルにこんなに好感を持つとは思っていなかったので、びっくりしたのでした。本当、アニメ版のスタッフは超良い仕事してると思います。作品の魅力を十二分に引き出す、素晴らしい仕事です、拍手喝采



    Episode3 「ラプラスの亡霊」


機動戦士ガンダムUC 3 [DVD]

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 若干盛り上がりには欠けるものの、ここもやはり、あの込み入った原作をよくここまでまとめたなと感心しながら見ました。


 全体的に、バナージがちゃんと主人公をやってるな、っていう実感があって、それが心強いというか。原作では地球降下のあたりまでずっと、なんか主人公が状況に流されてるだけという印象が強かったので。
 ダグザがシナンジュに一矢報いるシーンは原作でも特に熱いシーンなのでもっと盛り上げても良かったかなとも思いますが、全体的にはやはり丁寧に作られた良い出来です。
 そう、リディがオードリーを地球に連れて行く、ってところだけ少し唐突でしたが。まぁ仕方ないのかな。
 「男と見込んだ」ってセリフは残したのかー、とも思いますが、まぁ福井氏的にははずせないセリフなのでしょうし、存外さらっと流していたので、そんなに気になりませんでした。


 ガザCとかアイザックとかドライセンとか、メカも懐かしいのを中心にマニアックに手広くやっていて、この辺は宇宙世紀ものならではの楽しみですねぇ。ドライセンのトライブレードが無駄にカッコいいとか(笑)。
 で、その点については第四話が色々やりたい放題なわけですが……。



    Episode4 「重力の井戸の底で」


機動戦士ガンダムUC 4 [DVD]

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 怒涛のファンサービス回(笑)。
 初っ端からジュアッグで、その後もゾゴックだのイフリートだのドワッジだの、ガンキャノンディテクターだのネモ3だの何だの、敵味方共にMSV大行進でありました。世界中の建造物に隠されてたジオンMSが次々出てくる所なんか、笑い過ぎて涙出たよw
「動く戦争博物館かよ」は正に言い得て妙ですねえ。
 シャンブロも完全にモンスターパニック映画状態でしたし。


 また、笑えるばっかりじゃなくて、テーマ的にも重い内容を突っ込んできてるな、という感じでした。次に書く別作品の感想ともかぶる所ですが……昨今の日本を取り巻く諸々に関するニュースを見ても、こういう憎悪の問題って今一番、頭の痛いところなので。どうしたものかな、というわけで、色々考えながら見たわけなのでした。
 原作だと、ロニさんとかあの辺はイスラム関連で露骨にアレがナニな話になってて、正直どうなのよと読んだ時に思ったわけですが、そこを単純に「ジオンの連邦に対する憎悪」の話にして、なおかつ場所をトリントンに一本化したのもアニメ製作スタッフ側の良い判断だったと思います。原作の感想でも書きましたが、ガンダムは現実の現代史と切れてる架空世界である事に意味があるので、9.11を露骨に想起させるような要素を取り入れるのが得策とは思えない。
 本当、この辺、アニメスタッフは良い仕事してますよ。お蔭で手放しで褒められる作品に仕上がってると思います。


 というわけで、続きも期待。バンダイチャンネルで公開されたら、のんびり追いかける事にします。