帝都妖怪新聞


帝都妖怪新聞 (角川ソフィア文庫)

帝都妖怪新聞 (角川ソフィア文庫)


 明治時代の新聞に掲載された妖怪談や奇談怪談を集めた本。
 当時のものらしい挿絵も入っていて、気軽に読める良い本です。



 とりあえず何が面白いって、もう文明開化だっていうのに、まるで今昔物語集からそのまま引っ張ってきたような話がゴロゴロ載ってる事で。読んでる間中、可笑しくてしょうがありませんでした。夢のお告げに従って掘ってみたら大黒天像が出て来た、とか(笑)。


 一応、文明開化以降という事で、記事を書いている記者も「このような昔話みたいな話は眉唾だ」「軽蔑すべき話だが」と前置きはするのですが、しかしむしろその前置きを言い訳にしておいて、結局はノリノリで挿絵までつけて記事に書きつけるわけで、日本人の本音と建て前なスタイルはこの頃から変わらんなぁと(笑)。


 個人的に面白かったのは。
 よく、三遊亭円朝の『真景累ヶ淵』の「真景」は「神経」の事で、怪異なんてしょせんは神経病だという当時の言い回しが隠れているのだ、と聞いていたのですが、「神経」という言い方がどのようにされていたのか掴めていませんでした。しかしこの本で、頻繁にこの「神経病」などの言葉が記者の寸評に登場するのを見て、ようやく実感する事ができました。かなり広く言われていた表現だったのですね。
 まぁしかし。たとえば猫を虐待した結果猫に祟られた、という話の締めに、こんなのはいわゆる神経病であって猫が祟ったりはしないが、しかし良からぬしわざをしたから天の咎めでこんな奇病にかかったのだろう、とか書かれてあったりして。祟りを神経病のせいにして啓蒙的な事を書いたつもりでも、結局因果応報を認めているので全然開明的な記事になっていなかったり(笑)。どうも、万事そんな香りがします。


 ともあれ。息抜きに眺めるには悪くない本でした。