日本国憲法


日本国憲法 (小学館アーカイヴス)

日本国憲法 (小学館アーカイヴス)


 改憲の話題が活発に出て来るにともなって、最近売れているらしい、読みやすく編集した日本国憲法。振り仮名と新仮名遣いにしただけで、けっこう手軽に読めるもんです。
 たまたま興が乗ったので読んでみたのですが、なかなか面白いもので。


 とりあえず、意外に知らなかった記述がけっこうあるものだな、というところで発見があったりして。天皇が幼年だったりした時のための「摂政」の規定なんてあるんですね。
 あと、大赦や特赦、減刑に関する記述なんかもあって、びっくりしたり。こんなの、実際に戦後になってから実施された事あるんですかね、大赦なんて。現代の価値観じゃ、罪人の刑が免除されても、それで徳だなんて思ってもらえないだろうなぁ(笑)。


 そして何より、憲法前文から異様な気迫というか、何とも言えない勢いを感じて、何だろうこれ、と動揺したという部分があります。
 私は日本国憲法成立前後の事情をまったく知らないので何とも言えないのですが、これ、実はすごく過激なことが書いてあるんじゃないか? という気はしました。敗戦後に書かれたにしては、全然しょんぼりした感じではなくて。
「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」
 この辺の大仰な表現なんか、むしろ当時の戦勝国に対する皮肉だったんじゃないの? という気もしてくる(笑)。正直、読みようによっては理想に走り過ぎてる、とも思えるのですが、しかしどうにも、ただお人好しだからそうなってるような気はしないのですね。むしろどこか、挑みかかるような勢いを感じるのです。この辺り、どうなのでしょうね。



 その後の各条項ですが、私は端的に、「ゲームのルール」を読むような気持ちで読みました。日本というゲーム、国会というゲーム、行政というゲームの、各種ルール。
 一つ上の、『盤上の夜』の感想で書いたように、昨今のエンタメはゲームの中で戦う事それ自体だけではなく、実はそのゲームルール自体に不備があったり、ゲームの仕組みに悪意が紛れ込んでいたりする事へと、関心を移しているように思える。そしてそのような想像力が暗に示しているのは、「ただのプレイヤーである限り、どんなに最善を尽くしても報われないかも知れないよ」という事です。単にプレイヤーであるだけでなく、我々はゲームのルールそのものを検証し、時にはルールの改変というところまで視野に入れていかないといけないのかも知れない。
 そういった一種の焦燥感のようなものは、ここ最近の私の中にかなりあります。
 ツイッターなどで、最近特に、柄にもなく政治関係のツイートやリツイートを頻繁にやっているのも、そうした危機感に駆られているからなのでした。


 ……などと書いて、私が端的に改憲を主張しているのだと解釈されると、ちょっと待ってって言いたくなるのですけれども(笑)。しかしいずれにせよ、我々はもう、我々の生活を規定しているルールやシステムについて、無関心なままではいられない時期に来ているのではないかという事は、言えるような気がします。


 普段、取扱説明書を読まないままテレビゲームを始めてしまう人も。利用規約を読まずにサイトの同意ボタンを押してしまう人も。
 日本国のルール、読んでおかなくて大丈夫ですか?