想像力の地球旅行


想像力の地球旅行―荒俣宏の博物学入門 (角川ソフィア文庫)

想像力の地球旅行―荒俣宏の博物学入門 (角川ソフィア文庫)


 なんだかんだで、年に1冊くらいは荒俣宏読んでる気がするぞ(ぉ


 というわけで、タイトルだけ読むとよくわかりませんが、副題は「荒俣宏博物学入門」。荒俣氏といえば博物学、という事でこの人には博物学関連の著作は山ほどあるわけですが、「入門」という形で、ある程度体系立てて書かれたものは意外に少ないので。そういう意味で価値ある一冊なわけであります。


 古代の博物図鑑事情から、キャプテン・クックをはじめとする大航海時代の成果、さらにビュフォンやキュヴィエなどの業績に触れたり、リンネの植物分類の特徴などを平易に紹介したり、そしてダーウィンまで。豊富な図像も収録されていて、読み応えはさすがでありました。そりゃあ荒俣先生の一番の十八番だものねぇ。



 そして何気に最も気になっていたのがこの本の終盤で紹介されている、日本の博物学本草学の系譜の紹介でした。以前書いたように私は今、平賀源内とかその周辺の学術の動向なんかを主に調べているので。
 実際、京都・大阪と江戸で学者たちの活発な活動があった事は知っていましたが、名古屋にも本草学の一大拠点があったのですね。この辺り、知らない事も多くて非常に面白く。



 最後に記述されていた、博物学の方法論の話も、個人的にすごく共感が持てました。私が理想にするのも、そういう勉強法だなぁと。
「無限の現象を――たがいに何の関係もないと思われる事象を、収集、分類していくうちに、ふと見えてくる、まるで直観のごとき宇宙の全体像」。近代科学の方法論とは全然別の、宇宙あるいは世界へのアプローチなのですけれども。私もそういう風に世界が見たい人なのです。事象を集めて、一つ一つ点としてプロットしていって、やがて浮かび上がってくるぼんやりとした全体像が見たい。
 きっとそんな風に思ってるから、荒俣宏の本は肌に合うのでしょう。


 まぁ多分、合わない人には合わないのでしょうけど(笑)。ともあれ、この本については、さすが著者のホームグラウンドであるだけに、貫録の横綱相撲といった安定感のある本でした。なかなか楽しみました。


 しかしアラマタの本ばっかり読んでてもしょうがないので、また関係のない点を拾いに、別な本へ移るとしましょうかね。