昔話と文学



 角川ソフィア文庫柳田國男コレクション、読むのは2冊目。
 上で『かぐや姫の物語』の感想述べた中にちらっと書きましたが、一時期『竹取物語』について興味を持って調べていたことがありまして。いずれ何らかの形で調べた事を出力したいなと思っていたりします。
 その一貫で、柳田國男が『竹取物語』にどんな言及をしているのかが見たくて、少し優先して読み始めた次第。



 先に本全体の感想を言うと、面白かったです。
 伝説とかその辺の、他の口承文芸と比べても、昔話の研究ってどこか捉えどころが無いようなイメージがあって、ちょっと苦手意識があったのですが、柳田のガイドで追ってみるとかなりすんなりと頭に入った感じがします。この辺りはさすが、という感じ。
 また、相変わらず語り口が面白い。『妹の力』よりもさらにリラックスして読んでいました。「桃太郎に日本一の黍団子が出て来るが、一体何が日本一なのか」とかツッコミがいちいち秀逸でw


 そうした形で、昔話の発生と変化を追及していく手際はなかなか面白かったです。
 で、上記の通り竹取物語に関して見ていくと……羽衣説話との関連性を論証する手捌きは見事なもので、私も思わぬヒントを受けてさらにいろいろ考えることが出来ました。
 一方、たとえば月に都が存在するなど、『竹取物語』には明らかに中国神仙思想由来の要素もあるのですが、柳田はそこには絶対触れない(笑)。ただ昔話を少し膨らませて文字化したのが『竹取物語』だというのが彼の主張で、相応の説得力は感じるのですが、やはり柳田の説明だけではカバーできない側面が『竹取』には確実にあると思う。
 全般に柳田は中国由来の要素には冷淡で、その点は注意して読まねばならないのかなとは思いました。民話や昔話ならまだしもですが、古代の文字情報についてはやはり大陸からの影響を過小評価するわけにはいきませんし。
 などなど色々と思うところはありましたが、やはり楽しく読めたというのが一番ですね。少し間は空くかもですが、また読んでみたいと思います。