相撲の話


相撲の話―鳶魚江戸文庫〈4〉 (中公文庫)

相撲の話―鳶魚江戸文庫〈4〉 (中公文庫)


 三田村鳶魚江戸文庫から気ままに目についた巻を拾って読んでみるシリーズ。
 実は、相撲には前からほのかに興味を持っていたりして、それで手に取る気になった次第です。ただし、私の関心が向いてるのは誰が横綱だったとか誰が強かったかとかいう話ではなく、神事としての相撲だったり文化、儀式としての相撲だったりなのですが。


 とりあえず、『江戸の白浪』を読んだ時も思いましたが、鳶魚の本を読むとつくづく思い知らされるのは、昭和くらいまでは教養としてかなり多くの層に共有されていたであろう知識、講談とか歌舞伎とか落語でよく知られた知識というのが見事なくらいごっそりと失われたのだなぁ、という事でした。鳶魚が「かの有名な」「ご存知」という前置きで書く人名とか出来事とか、ほとんど知らない(笑)。
 だからそんな距離感を、もうそれ自体を味と思いながら、読むしかない。そうだとしても面白くはあるのですがね。


 そして、体系的というよりはそぞろ歩きな鳶魚の語りにより、江戸の大相撲の活況そのものよりは、それ以前やその周辺の話が多かったりもして。いろいろと初心者向けでない内容でありました(笑)。
 とはいえ、感想を聞かれれば、面白かった、となる。そんな読書でした。得る物も少なからず。
 個人的には、上で紹介した小説『ニンジャスレイヤー』と同時期に読んでいたので、スモトリが野生化するような間違った日本観と鳶魚のディープな日本雑学がミックスされて、脳内日本イメージが一時期大変な事になっていたのでした(笑)。