相撲の歴史


相撲の歴史 (講談社学術文庫)

相撲の歴史 (講談社学術文庫)


 先日紹介した鳶魚の本よりは、系統だった相撲に関する通史。
 明治以降の相撲の変遷や、戦後の相撲協会の動向、アマチュア相撲や学生相撲なんかについてもかなり色々な側面から書かれていますが、無論の事私は古代から中近世までの相撲に関する文化史への興味から手に取りました。


 久しぶりに、歴史民俗学への好奇心が満たされる快感を満喫した、といった感想。古代の相撲に関する知識は学生時代、京極夏彦の『塗仏の宴 宴の支度』で仕入れて以降ずっと情報更新が無かったので、実はその頃にしていた勘違いを一つ、十数年ぶりに訂正する機会を得たりもしました。楽しい読書でした。
 平安時代初期、宮廷行事としての相撲節が旧暦七月七日、つまり七夕の日に神泉苑で行われていた、という事実が知れただけでも値千金。むろん筆者が言うように、ここで七夕の日が選ばれたのは前後の相撲の歴史から見れば過剰な意味付けをするべきではないところかも知れませんが……それにしても、神泉苑というロケーションは看過できない。もう少し突っ込んで掘り下げられれば、これは面白いものが出て来るかもという手ごたえを感じました。


 個々の話題については確かに駆け足な感もありましたが、サジェスチョンとしては十二分の内容でした。これを元に、さて次はどこを掘り返そうかな、というところです。


 そんなわけで。