ハチワンダイバー完結まで
- 作者: 柴田ヨクサル
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/12/19
- メディア: コミック
- 購入: 7人 クリック: 403回
- この商品を含むブログ (311件) を見る
何気に単行本が出るたびに読んでいた『ハチワンダイバー』、完結したので軽く。
ツイッターで何度か呟きましたが、はっきり言ってこの作品のノリも、笑いの取り方も、ヒロインの造形も、その他何もかも、私の好みではなく。むしろ真逆です。あまりにも自分と合わないので、おそらく柴田ヨクサル氏の他の作品は永劫読むことが無かろうと思ったほどで……しかし、にも関わらず完結まで追いかけてきたのは、それらすべての合わなかった点を補って余りあり過ぎるくらいに、将棋の対局シーンが良かったからでした。その緊迫感、展開の見せ方、その他その他、もう本当に素晴らしかった。
基本的には、将棋を知らない人でも読めるように、盤上で起こってる戦いをバトル漫画とか他の戦闘シーンにたとえて、それで見せているわけではありますが、しかし完全にそれだけにはせずに、ちゃんと戦型とか定石とか、たとえではない盤上の出来事そのものを読者に伝えようとしていて、それがしかも物語のテンポを殺していない。これだけでも、すごく大変な事なんだろうと思うので。
元々将棋漫画では『月下の棋士』の熱烈なファンだったのですが、盤上で起こってる事を(将棋を知らない)読者にも伝えようという熱意の面では、この作品の方が勝ってたと思います。
実際、この作者の方も将棋がめっぽう強いそうで。なんと、作中人物のオリジナル戦法である「ハチワンシステム」を使って、イベントで実際に女流棋士に勝ってしまっているというとんでもない戦歴の持ち主でもあります。まさか、マンガの主人公用に作った新戦法でプロに勝つとか、そんなマンガみたいな事があるのかと初めて知った時は耳を疑いましたが。それくらい棋力のある人が描いてるから、やっぱり説得力が違うんですよね。
とにかくそんなわけで、将棋題材の漫画を腹いっぱい楽しませてくれたこの作品には、改めて感謝を。
個人的にぜいたくを言えば、澄野さんの将棋がもっと見たかったなぁ、ってことぐらいですかね。あの奇想天外で強引な棋風、もう大好きだったので。
そんな感じで。なにげに、マンガをちゃんと最初から終わりまで読んだの、久しぶりかもしれない……。