時計じかけのオレンジ


時計じかけのオレンジ [DVD]

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 キューブリック映画を見るのはこれが二本目。とはいえ、作品の印象は『2001年宇宙の旅』とはかけ離れており、おいおいこれを同じ人が撮ったのかよ、と呆れながら見ておりました(笑)。


 もちろん、映像センスはすごいので。一瞬たりと退屈はしなかったのですけれど。それにしても前半の、主人公の無法っぷりがあまりに卑猥で猥雑でありまして。
 最高の映像センスで、最低なものが延々と映されているという、この何とも言えない体験。これは見てもらわねば分かりますまい(笑)。作中に出てくる絵画や家具調度も、よくもまぁこんなハイセンスに卑猥なものばかり集めたもんだ、と。


 ストーリーは皮肉の上に皮肉をかぶせてさらに皮肉をまぶして、という内容。直近で見た『ローマの休日』のハッピー具合が一気に吹き飛びました(笑)。
 どうにも悪魔的な無法があって、しかしその無法を「善」に無理やり変えてしまおうという悪魔的な対処があって、その対処法の悪魔的さを告発するために行われる悪魔的な企みがあって、結局何も好転しないまま終わるっていうこの。
 しかし、この「作中に正しいものが一つもない」状態は、現実に対処するスタンスとしては、実は誠実なんだよね、とも思うわけです。少なくとも、これくらい物事を相対的に皮肉に捉えた上で、それで現実に向き合う感覚は必要だよなぁ、というのが感想。


 悪人の更生というのも、難しい話をするならフーコーあたりとか持ち出してワイワイやらなきゃならないところ、映像でこうして見せるといっぺんに体感できてしまうわけで、その辺は映像作品の巧みなところだなぁと思ったり。
 いやしかし、疲れる映画ではありました(笑)。


 キューブリックの他の作品もいずれ見たいけど、しばらくお休みな……w