神統記


神統記 (岩波文庫 赤 107-1)

神統記 (岩波文庫 赤 107-1)


 実は、この本の存在はつい先日まで知ってもいなかったのですが。『イリアス』『オデュッセイア』の訳注にたびたび出て来ていたので認識し、ここまで来たらギリシャ神話を一通り見ておこうという気になったため、続けて読み始めたのでした。


 こちらも叙事詩でありまして。で、『イリアス』『オデュッセイア』が読みやすさ重視のため散文形式で訳されていたのに対し、こちらは一応韻文形式になっております。そのお蔭で、妙な倒置法が多くてちょっと困惑しましたが(笑)。そんなにボリュームがあるわけでもないので、サクッと。


 しかし短いながらも、創世神話から、ゼウスが神々の頂点に立つまでの経緯、神々の系譜などなど、今まで断片的にしか知らなかったギリシャ神話の個別のエピソードに一本背骨が通る感覚は、なかなかに心地よいものでした。
 なにげに、メドゥーサがポセイドンと良い仲だった、とか書かれてて「あら、まぁ」みたいになったりとかw


 あと、登場する神々が、抽象的な概念に関する神格がやけに多い事も印象に残りました。何といっても、戦闘の神と戦争の神と、殺害の神と殺人の神と紛争の神が、別々にいるという(笑)。ずいぶん分類が細かいな、と。他にも忘却の神とか運命の神とか。
 日本神話なんかでは、水の神火の神風の神と、基本的にフィジカルな物をあらわす神が多いわけで、それと比較するとギリシャ神話の抽象性は際立って見えました。さすが、形而上学を生んだ土地柄だよなぁ、と。


 そんな感じで。ようやくギリシャ神話の基礎文献に当たった事で、だいぶその全体像が視野に入ってきた心地です。まだまだ奥は深いようですが、まずは前進、と。
 せっかくなので、もう少しギリシャ神話界隈を探ってみる事にします。