風と共に去りぬ


風と共に去りぬ [DVD]

風と共に去りぬ [DVD]


 連休がもらえたものの、給料日前でお金が無かったので、家に引きこもり状態という日があり。どうせなら、大作映画をこの機会に見てやろうと思いまして、実質4時間近い上映時間を誇るこの作品を借りてきました。
 名作の誉れも高い作品。よもやこれを見る日が来ようとは、半年前までは考えてもいませんでした。普段の私の関心圏とは、かなり遠い作品ですからね。


 まず先に書いておくと、さすが見事な作品でした。映像が綺麗だし、セリフも洗練されてて、ほぼ4時間ある中でダレていると思えるところもなく。
 喪服でダンスパーティーに参加しちゃったり、カーテンで即席ドレス作っちゃったり、といった要所要所の小技も面白く、レット・バトラーのセリフの端々に見られる皮肉交じりのウィットとかも心地よく。
 何よりもそういう、純粋な作品のポテンシャルを味わって満足した、という事を最初に言っておこうかと。
 ……というのは、私の感想の書き方作法としては、この後に不満点が来ることの前フリですw


 まぁですね、見終えた直後の私の率直な感想としましては、「この金持ちの貴族どもめ」だったわけです(笑)。
 だってねぇ、様々な物を失ったけれど、「タラ」という土地さえあればまた頑張れる、土地へ帰ろう、そして土地からまた始めよう――って〆られるとさ、都会で借家住まいしてる身としては、完全に共感できる範囲の埒外に行ってしまうわけで。
 もちろん、一度どん底まで転落して、それでも土地だけは手放さなくて、激動の時代の中再び再起を果たしたという展開は分かるし、そこに共感できなくもないのだけど……しかしやはりどこか、距離は感じてしまったのでした。


 この映画が、戦後日本で公開されて大ヒットを記録してて、その理由として戦中戦後の日本とこの作中の南北戦争の南部とに強いシンクロを感じたからではないかとウィキペディア先生が言っているわけですが、なるほどそれは見ている間も強く感じました。
 特に南北戦争開戦前、主人公周囲の大人たちが「銃火器や大砲の性能では負けてるけど、俺らには強い精神力がある!」的な事を主張してる辺りとか、苦笑い無しに見られる日本人が居るだろうか(笑)。
 また南北戦争後、ヒロインのスカーレットが、戦争で負けた分を商売で、経済でやり返すのだと気を吐くあたりも、とても他人事とは思えません。


 で、そんな激動の時代を不敵に乗り切るレット・バトラーも、時にヒロインと思えないくらいどぎつく我の強さを描かれるスカーレット・オハラも、そういう人物たちのしたたかさは嫌いじゃない、というかむしろ好きだったりしました。
 レットもスカーレットも「利己的」とか評されたりしますが、おそらく南北戦争のような秩序も価値観も大きく揺らぐ時代には、あれくらい利己的な人物の方が強いのだろうなぁ、と。世間的に印象が良いのはメラニーの方でしょうが、そのメラニー南北戦争を生き延びられたのはスカーレットの強引さと我の強さ(によってレットに助けを求めた事)のお蔭だったわけですから。
 あと、特にレット・バトラー良いよね、っていう。南北戦争の混乱中でも余裕かましていられる経済力が基礎にありつつ、炎におびえる馬を咄嗟の機転で制して無事馬車を進ませるとか、そういう対処能力の高さも含めての総合的な頼りがいがあって、そりゃ惚れるわっていうか、私がヒロインだったら中盤あたりでもうアシュレーの事忘れてると思うw
 そんなレットが子煩悩パパで、上流階級の御婦人たちの心証もたちまち良くしてしまう辺りとか、実に良いわけです。
 だからこそ、ラスト1時間になってから立て続けに起こる重い展開で萎れるレットの姿見るのはなかなか辛かったし、あのレットをしても最終的にヒロインを落としきれずに「疲れて」しまうのか、というのが若干ショックでもあり。
 いや、やっぱ色恋って難しいんですね。小生、根っからの朴念仁なんでその辺よく分かってないんですけれども。


 ストーリーとしてはそんなところで、共感できなかったなどと書きつつ、個々の登場人物について思うところを書き始めると止まらなかったりして、やはり色々と思うところはあり。そのようにたくさんの思いや感情を喚起してくれるというのは、つまり良い作品なのだという事だと、思っています。


 ところで気になるのは、劇中での北部の描かれ方で。北軍兵士や北部の政治家の描かれ方に明らかにバイアスかかってるよなぁ、というのは見ていて感じました。当ブログに来るような方に向けて分かりやすくたとえると、『MS Igloo』に出てくる連邦軍人くらい(笑)。
 無論、そこは主題ではないので、スルーして見れば良いのだろうと思いますが、しかしまぁ、この映画だけで南北戦争を理解した気になっちゃまずいのだろうな、とは思った事でした。
 とりあえずそんなところで。