鳥


鳥 [DVD]

鳥 [DVD]


 とりあえずヒッチコック作品を続けて見ている流れで。
 実はこの作品は学生時代だったかに一回見ています。途中からだったかも知れないけど。十年ぶりくらいかな、という私としては珍しい再視聴。とはいえ、ほとんど内容を忘れていたのでほぼ初見も同然でした。


 やっぱね、ヒッチコック監督作品のカメラワークすごい。やっぱハラハラするシーンでは為す術もなくハラハラさせられちゃうなぁ。公園の遊具にとまっている鳥の数が段々増えていくシーンとか、心憎いくらいの間の取り方。とにかくパニックシーンの見せ方にはひたすら圧倒されておりました。


 また、映像の合成技術もすごい。今日ならCG合成でだいぶ楽に作れるでしょうが、この時代によくもここまで違和感のない映像を作ったもんだな、と。もちろん多少注意して見れば、合成だというのは分かるのですが、しかし違和感はほとんど感じないです。役者さんの演技も合わせて、見事にそのように見えます。
 生きてる鳥と役者さんを直接撮ってるシーンも少なからずありますが、その辺も撮影さぞ大変だったろうなと。借りて来たDVDには特典映像としてメイキングなんかも入ってたのですが、この『鳥』はヒッチコック作品の中でも最も撮影が困難だったというナレーションが入って、思わず「そりゃそうだろ」とツッコミを入れてしまいました(笑)。私がプロデューサーだったら、監督から構想聞かされただけで卒倒するね、多分w


 序盤の、人間関係を描いてるパートは、正直この映画のメインである鳥の襲撃パニックというのとどうつながるのか見えなくて、見てて多少テンション下がってた感じはあります。怪獣映画とかでもそうだけどさ、いわば映画のメインは怪獣なり怪物なり動物なりが暴れるシーンで、人間ドラマって添え物、もっと極端に言えば無用なもののようにも思えるんですけど、しかし人間側のドラマも描いておかないと、観客が感情移入する先がなくなってしまうし、また映画としての尺も持たなかったりするし。そこをどうバランスとるかっていうのは、この手の映画見るたびに考えてしまいます。
 見終わってみれば、決して無駄なシーンじゃなかったっていうのも分かるんですけどね。


 最初にこの映画を見た頃、私はミステリ小説ばっか読んでた時期で、端的に「なぜ鳥たちが突然人間を襲うようになったのか」の原因が明かされないこの映画の結末を不満に感じたのを、わりと鮮明に覚えています。今、この年で見てみれば、むしろ原因の分からない事こそがこの話の怖さの肝の一つなんだ、というのも腑に落ちるのですけれども。
 いずれにせよ、大変面白い視聴でした。もうしばらく、ヒッチコックを優先しつつ映画を選んでいきます。そんな感じで。