駅馬車


駅馬車 [DVD]

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 趣向を変えて、この辺でちょっと西部劇でも見てみようかと。
 監督ジョン・フォード、主演ジョン・ウェインと言われてもピンと来ない程度の映画初心者がお送りしております。でも見てみたら、面白かったですよ。


 まず何よりも、アメリカの風景に圧倒されて「うへぇ」ってなりました。なんだあの地形。マイクラスーパーフラットとか山岳地形とかかよ! っていう(笑)。とんでもないね。あんなすげぇ地形あったら、もうそこを馬車が走ってるだけで絵になるに決まってるじゃんズルいぞ、というくらいw


 物語は駅馬車に乗り合わせた人々の群像劇から、インディアン(劇中ではアパッチと呼ばれてる)の襲撃とラストに決闘シーンでクライマックス、という構成。とりあえず、あんな狭い馬車に7人も乗り合わせて7時間とか、昔の人は大変だったんじゃのぉ。エコノミー症候群になりそう(笑)。
 酒飲みのダメ親父に見えた医者が何気にいろいろと活躍したりして、ドラマとして面白かったです。


 そして終盤の見せ場、アパッチ襲撃シーン。アクションも無論見ものでしたが、個人的には近年の映画やドラマや漫画で時々耳にする「騎兵隊の到着だ」というのを、ようやく実見できたというのが大きかった気がします。なるほどこれは確かに、無類にたのもしく感じるなぁ。
 まぁもちろん、現代の視点で見れば、ネイティブアメリカン側の描き方について気にしないわけにもいかないのですが、さりとてそれを言い始めると、せっかく見た映画についてちゃぶ台を全部ひっくり返す事になるからねぇ……そういう問題意識はきちんと頭の片隅に置きつつ、この作品はこの作品で良さを拾っていくしかないよな、という感じ。
 同様に、劇中に出てくるヒロインの一人が周囲の人物、特に他の女性からやけに蔑視・忌避されていて、何だろうかこれと思っていたのですが、Wikipedia見てみると、やはり彼女は「娼婦」だった様子。『風と共に去りぬ』でも、レット・バトラーと親しい娼婦が登場して、スカーレット含む周囲の人々に蔑視されつつも印象的な存在感を放っていましたが。こういう女性がこういう扱いを受けているというのも、まぁアメリカの歴史の一側面なのかなとも思いつつ。
 しかしそのヒロインが最後、新天地の牧場に移る事でハッピーエンドになり得るという展開は、なるほどこの時代のアメリカだよな、という感じでした。主人公のリンゴ・キッドも脱獄の懲役に服さねばならぬところ、やはり新天地に行くという行動のもとで、実質その刑期がチャラにされています。自らリンゴを放免した保安官に、医師ブーンが「彼らを文明から逃がしたのだ」とか言っていて。
 つまり、身の処し方でにっちもさっちもいかなくなっても、開拓の最前線、フロンティアに移る事でそこをリセットできるという話になってるわけで、これは未開拓の「フロンティア」を持っていた国ならではの希望だなぁと、なんだか眩しいような気持ちになったり。


 そんなこんなで、色々と新鮮な視聴でした。ラストの後味も良く、やっぱいい映画でしたよ、っと。
 次がいつになるかは分かりませんが、またいずれ西部劇も見るかも知れません。