フランケンシュタイン


フランケンシュタイン [DVD]

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 久しぶりに怪奇映画。
 怖いのは基本的に苦手なのですが、こういうのはわりかし平気みたいです。わりと楽しく見ました。


 とりあえず、パロディじゃないホンマモンのマッドサイエンティストが出て来て大興奮しました(笑)。そういう古典映画のパロディシーンとか(ドリフのコントとかで)けっこう見てるけどパロディ元の本物は見てない、みたいなの私の世代はかなり多いんじゃないかという気がするのですが、そういう意味でもこうして原典にあたってみるのはけっこう楽しかったりします。


 死体の切り貼りによる人造人間を蘇生させるという、よく知った筋ながら、改めて見てみるとかなり鮮烈な印象でした。まず何より、この怪物を演じてる役者さんの演技が良くて、その異様な存在感がよく出ていたかと。初登場が後ろ向きなのとか、歩き方とか、小技が良い。
 で、その怪物と小さい女の子が遭遇するシーン、その一枚絵は見た事があったと思うのですが、これが想像していたのとは全然違うシーンでびっくりしたり。しかし、そうであるがゆえに重要だよなぁ、とも。
 小さい子に花を渡されて喜ぶ様子を見るにつけ、実のところこの怪物って明確な悪意を持った存在じゃなくて(その辺は『魔人ドラキュラ』のドラキュラ伯爵とは違っていて)。また生まれて来たくて生まれてきた存在でもないし、最後に山狩りで狩りだされてしまうシーンは逆に怪物の方に憐れみを感じさせられてしまったりもする。
 けど、じゃああれが単に「かわいそう」で、保護されるべき存在なのかというと、劇中で出た犠牲者を見てもそうは言えないという。
 要するにあれって、善でも悪でもない、ただ意思疎通不能で理解不能な存在なのです。「悪」ではないが故に、それを人間側が寄ってたかって殺してしまう事には後味の悪さというか据わりの悪さがあるんですけれども、かといって放置も出来ない。そういう異物的な存在というのは、『キングコング』のコングもそうだったよなぁ、と。
 最近でも、集落を襲う熊を処分する事に対して「かわいそうだろ」って抗議する人たちがいてネット上で物議を醸していたりしましたが、同じ構図の問題なわけで。だから、古い映画ですけど、テーマは依然としてアクチュアルなのでした。


 科学がそういう他者性を持った怪物を生み出して、その他者性との向き合い方が主題になってるという意味では、この作品もすごく「SF」なのかな、という気もしたり。
 そんな感じで、わりとミーハーな動機で見始めたにしては、けっこう重い事を考えさせられてしまった感じでした。まぁでも、そういう予想外の何かに出会えるから創作作品の視聴というのは楽しいので。
 さて、今年はあと2〜3本ですかね、映画を見るのも。引き続き進めていきたいと思います。