雨に唄えば


雨に唄えば 50周年記念版 スペシャル・エディション [DVD]

雨に唄えば 50周年記念版 スペシャル・エディション [DVD]


 新年最初の映画レンタル。なんか、そこはかとなくミュージカル映画が見たくなったので。


 無声映画からトーキーに移り変わる過渡期を舞台にしたハリウッドの話という事で、その世界観に入り込むのに苦労した感じはありました。おまけに、ミュージカル映画というのにも慣れてないですし。
 しかし一度入り込んでしまえば、これはもうとにかく楽しい、楽しい映画だったというのに尽きます。もう、参ったなぁってくらい。


 なんかこう、今まで私が触れたどんな作品とも違うんですよね、感触が。たとえば映画だったら、近年のものならば大体「泣ける!」とか「スペクタクルでハラハラドキドキする!」とか「怖い!」とか「バイオレンス!」とか「深いテーマで考えさせられる!」とか、そういうアヤがあると思うんですけど。この作品はもう、ただひたすらにハッピーで、ただひたすらに幸福感を時間いっぱい振り撒き続けるっていう、そういう風になってるんですよ。作中のパフォーマンスも小技や演出も全部それだけを指向してる。最後の最後に、ヒロインキャシーの立場が危うくなってそこだけちょっとハラハラするけど、それ以外はとにかくひたすら笑って見てられる映画で。
 ここまで見た中では『ローマの休日』が一番近いけど、あれよりさらに徹底されてるような感じ。こりゃなんていうかすげぇな、っていうのと、逆にこんな作品は時代が下れば下るほど見られなくなっていく気がするんで、逆に強烈にこの作品が「遠い時代の映画」のように思えてしまうというのもあって。なんか、謎の切ない気持ちがせり上がって来たりもする(笑)。
 21世紀の現代に、こんな映画作れるかなぁ、作れるとすればインドくらいじゃねぇかなぁ、とか思ったりもして(笑)。


 まぁ、文化に老若があるとすれば、まぎれもなく若さがにじみ出てる時代の作品って事なんだろうなっていう印象もあるわけです。有名な雨の中で踊るシーンも、だいたい雨合羽つけた幼児がやりそうなアクションはほぼすべて実行していて、頭の片隅で私の理性が囁くわけですよ、良いオッサンが何やってんだ、ってw けど、それを成立させてしまえている空気が確かにあるんだよなぁと。そして、ひねくれモノの私があっという間にハッピーな気分にさせられてしまうわけです、否応なく。そういうパワーに圧倒されるばかりの二時間弱でした。


 欲を言えば、最後の最後で大女優のリナが悪者みたいにされてしまってたのが残念かな、っていうのはありました。ここまでハッピーな映画なら、もう全員がハッピーな状態で終わって欲しかったというのはあるけれど。まぁそれは贅沢ですかね。


 ともあれ、得難い視聴経験でした。新年一発目としては上々の滑り出し。さて今年も、映画視聴も頑張っていきましょう。