テアイテトス
- 作者: プラトン,田中美知太郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2014/12/17
- メディア: 文庫
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岩波文庫のプラトン地帯は抜けた筈だったんですが、先々月あたりに新刊として出てしまったので、ちょっと戻ってプラトン。
なんだかんだで、プラトン作品読むのは楽しいです。毎回趣向を変えてくれるから、マンネリ化を気にせず読める感じ。逆にそういう読み物としての側面も優れているから、もっぱら小説として読んでしまっていたり。
この作品は、幾何学をやってるテオドロスに、有望な若者がいるからとテアイテトスを紹介されたソクラテスが、若いのにちょっと意地悪したり励ましたりしながら「知とは何か」について議論するという内容。紹介された冒頭では、ソクラテスお得意のプレッシャーを相手にかけまくる問答をテアイテトス相手にいきなりフルスロットルで始めて「おいおい容赦なしかよ、鬼か」と思ったりもしましたが、逆にテアイテトスが怖じけずに必死に応えていると、お眼鏡にかなったのか、以降は励ましたり自信をつけようとしたりもして、なかなか微笑ましい会話でした。うーん、やっぱプラトン作品は『ゴルギアス』や『プロタゴラス』みたいに戦闘モード全開のやつより、ある程度友人同士のゆるやかな会話になってる作品の方がのびのびしてて好きかも知れない。
議論の内容もなかなか興味深いものでした。プロタゴラスの「人間は万物の尺度」とか、ヘラクレイトスの「万物は流転する」とかは、そういえば高校時代の倫理の教科書に載っていた気もします。が、そこではこのワンフレーズが載っているだけで、読んでる方も「ふーん」と思って読み流すばかりでしたが、それが実際に詳細に議論され検討されていると、がぜんその主張の内実に血が通ってくるような気分になり。
毎度、ソクラテスのたとえ話が面白いというのもありますが。鳥小屋とハトのたとえとか、私自身が非常に思い当たるところがあるのですごく頷きながら読んだりしました(笑)。
まぁ、ちょっと訳文に指示語が多くて、少し引っかかるところもありましたけれども。
そんなこんなで、再び岩波文庫の現在入手可能なプラトン作品はコンプリート状態に。しかし、解説とか読む限り、まだ他にプラトン作品はたくさんあるんですな。その辺をいずれ押さえるかどうかはまた考えどころですが……まあ、後で考えましょう。とにかく前進あるのみです。