裏窓


裏窓 [DVD]

裏窓 [DVD]


 長らくヒッチコック作品を見てきましたが、そろそろ代表作は一通り見たかなという事で、総仕上げに『裏窓』を選んでみました。
 事故で骨折して片足をギプスで固められた写真家が、家の窓から見えるアパートの各家の状況をこっそり眺めているうちに、そこで起こったらしい事件を察して追及していく、と言う話。


 とにかく、もう、この窓から見える景色、ロケーションだけで8割がた成功してるような作品ですよね、という。作品を通して、主人公の部屋からカメラがほぼ出ないわけですけど、そこから何が見えるのかをこのように配しただけで、もう脱帽もの。
 特典映像の関係者インタビューによれば、原作小説にはメインとなるセールスマン夫婦しか登場して来ないそうで、それ以外のアパートの住人をも映画の中で複層的に描いていくというのがヒッチコックはじめ映画スタッフの発案だとしたら、やっぱその構想力すごいよな、と。


 特に終盤のサスペンスシーンの盛り上がりが凄くて、なんかもう見てる私が腋の下に汗流れるくらいドキドキさせられてしまって大変悔しかったのですが(笑)。そこで視聴者をハラハラさせるためのヒッチコック監督の手管、技がもう、卓越し過ぎてて。
 ヒロインの身が危ないかも、っていう状況だけでもそれなりにドキドキするんですけど、その土壇場で、アパートの別の部屋に、全然本筋と関係ない、けれど無視できないような事件が起こりかける。で、そっちに気を逸らされる事で、本筋のサスペンス具合、ドキドキ具合が一気に加速するっていう、これがもう名人芸なわけですよ。
 なんか、こう、スイカに塩をかけるとなぜか甘味をより強く感じるみたいな(笑)。視聴者の心理をコントロールするテクニックの高度さに、ひたすら感服したのでした。やっぱヒッチコックすごい。


 全体的にも、一方的に見ることと見られることとの対比とか、いろいろと読み解いたりする切り口もあるのだと思いますが、個人的には上記の通り、視聴者をコントロールする呼吸の巧みさがやはり一番印象に残った、という感じです。
 あとはまぁ、グレース・ケリー美人過ぎる、って辺り(笑)。


 そんなわけで、ヒッチコック作品の視聴についてはこれで一区切りとしたいと思います。実に愉しい作品ばかりで、堪能する事ができました。うーん、やっぱりもっと早く見ておくんだったなぁ……w