ガリア戦記
- 作者: カエサル,近山金次
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1941/02/05
- メディア: 文庫
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サクサク進める古典読み。有名なこの本もついでに読んでしまいました。
修辞も、文芸的な装飾もほとんど見受けられない、非常に淡々とした文体。事前にある程度聞いてはいましたが、なるほどという感じ。
しかしそれでいて、特に戦闘に関する記述で、戦況が盛り上がってくると、ぐいぐい読まされてしまう辺りがなかなか。
大体、戦場なんて込み入った状況を、しっちゃかめっちゃかにならずに書けるというのは、それ自体文章の洗練なので。むしろ淡々としているかのように書けているというのがすごいという事なのでしょう。
直近に読んでいたのが『アレクサンドロス大王東征記』で、もうとにかく猪突猛進な部隊指揮の様子を散々目にしていたので、それに比べてカエサルの冷静な指揮官ぶりは色々と新鮮でした。うん、やっぱ指揮官は自分が最前線に突進するんでなくて、全体の戦況を見て苦戦してるところに増援を送るとか、そういう事をするもんだよね、と(笑)。
面白かったのは、たびたび渡河して襲撃してくるゲルマン民族に対する示威のため、十日間かけて橋を建造してローマ軍を対岸へ渡ったカエサルが、敵が決戦のために陣を組んだのを把握したところで、「いつでもローマがゲルマン人側へ攻撃可能だと知らしめる目的は達した」として、あっさり橋を渡って戻り、作った橋も壊してしまったという記述でした。ここで退くのは読物としては拍子抜けですけど、しかしアレクサンドロスとは違う、冷静で合理的なカエサルの采配の見事さだなぁと。
昔、『孫子』を読んだ時に、戦争というのは行政行為の一つなんだなぁと強烈に実感させられたという事がありましたが、久々にそれを思い返したり。
私は主に、伝説や俗信、あるいは技術や学術の発展なんかを主な関心に持って読書をしているので、そういう意味では『ガリア戦記』の記述というのは私の興味関心からは少し外れるのですけれども(実際、この本から、私が面白いと思った事を書き留めている自分用wikiへは特に何の情報収集もしなかったのですけれど)、しかしなんだかんだ退屈せずに読み終えたというのは、純粋な本書の面白さなのだろうなと思いました。
そんな感じ。