仕事と日


ヘーシオドス 仕事と日 (岩波文庫)

ヘーシオドス 仕事と日 (岩波文庫)


 岩波文庫で復刊されてたのでサクッと読んだヘシオドス。
 薄いしすぐ読めるだろうと思ってたのですが、内容がこう、不出来で働かない弟にヘシオドスが説教するというのが主筋なせいで、いささか読んでて眠くなりました(笑)。
 まぁ、紀元前ギリシャで起こった論争について、どちらの言い分が正当なのかとかはどうでもよい話ではありますが……。


 逆に、英雄叙事詩ではなく、農事や航海の方法を叙事詩として歌い上げるという特異さという、解説で触れられていた部分については多少興味は湧きました。これがエンタメとして受け取られる土壌、またそう受け取ったのがどういう人々だったのか、という部分ですかね。
 まぁ、この作品を現代人が、エンタメとして読めるかと言われると微妙な部分もあるかもしれない。
 ただ、古代ギリシャに生きた人々の生活、暮らし、風俗なんかを様々な角度から肉付けしてくれるという意味では大変面白い本だと思いました。種まきをする時期を何で知ったのかといった部分はもちろん、たとえば荷車について「我々が普段使ってる荷車が、百個以上の部材を組み上げて作られる複雑なものだと分からずに、必要になって作ればいいなどと思っていると痛い目に遭うぞ」みたいな事を言ってる記述があったりして、この時代の農業器具がけっこうハイレベルな代物だったらしいと実感できたり。
 やっぱり、知識だけじゃなくて、実感できるって大事だと思うわけです。


 同時収録されてる「ホメロスとヘシオドスの歌競べ」も、単純に史実としてのホメロス、ヘシオドスの事績を知りたいなら、ここから汲めるものはあまりないのかも知れませんが、例によって私は伝説その他、周辺情報も扱っている者なので、大変面白く読みました。ホメロスが、オデュッセウスの孫にあたるなんて説もあったんですな。


 そんな感じで、小粒ながら得るものは少なくなかった、そんな読書でありました。