チキ・チキ・バン・バン


チキ・チキ・バン・バン [DVD]

チキ・チキ・バン・バン [DVD]


 なんか、こう、気分的に「底抜けに陽気でハッピーな映画が見たい」、と思ったわけでして。例によってTSUTAYAであれこれ迷った末に、選んだのがこれでありました。こういう時、ミュージカルは心強い。


 で、本当に期待通り、最高にハッピーな映画だったので、大満足だったのでした。


 そもそも劇中登場するようなクラシックな車だけでもワクワクするわけですが、そこにガラクタ組み合わせた発明品ばっかりの実験室とか、あれとかこれとか、とにかく楽しいものばっかり詰め込まれてて。まるきり子供に戻ったような気分でニコニコしながら見ていました。


 どうにも私、いまだに自分の中の「子ども心」を持て余してるのに自分で戸惑う時があって。どんなに泣けると評判のファミリーものやメロドラマ見てもピクリとも反応しないのに、子どもの童心を裏切るとか、逆に童心に寄り添うような話になると、めったやたらと涙腺が緩むという妙な性向があるのでした。
 この映画も、泣かせる展開なんか全然ないのに、むしろだからこそ、中盤あたりを見ていて、なんだか泣きそうになってしまった。廃棄寸前の車を、子どもたちのワクワクのためだけに全力で手に入れて直す、この父親の頑張りぶりが、なんだか無性に嬉しくて、それで泣きそうになってました(笑)。


 後半の冒険展開も、言ってみれば子供だましのくだらない展開だとも言えるわけですけれども……それを、大の大人たちが全力で作って演じて、素晴らしい映像にしているのがこれもまた嬉しい。あやつり人形のパントマイムなんか、本当口開けてみてました。すごい。


 後半の冒険パートに出てくる国は、「子供を持つことが禁止」されていて、お妃さまは子供が嫌いで、そして王様(男爵って呼ばれてたから王国じゃないのかな?)は子供用のおもちゃが大好きで。そして「町には子供がいない」。
 私の中の小賢しい人格は、こうした描写からただちに現代批判とか、現代日本とのアナロジーとかを考え始めてしまうわけですけれども。その辺をくどくど書くのは、この作品の感想として相応しくないと思うからしないけれど、でもこの作品が子供たちに向き合う姿勢は、そうした社会的な問題に対する示唆にもなってるんじゃないかな、という気はしました。少子化が問題だって言うけど、一方で子供の騒ぐ声を迷惑がって保育園に防音壁作らされたりとかそういう、コミュニティとして子供を受け入れられる、子どもという存在に寄り添える心性や感性はどんどん鈍っている気がするし。Twitterなんかで、そういう世知辛い空気をたくさん見ている分だけ、余計にこの映画が描き出した「子ども心に徹底的に寄り添った世界観」が、なんだかまぶしいような気分になったのでした。


 こういう作品、やっぱり現代にもっと必要だよな、って思ったのでした。