ローマ帝国衰亡史(1〜10)


ローマ帝国衰亡史 全10冊セット (岩波文庫)

ローマ帝国衰亡史 全10冊セット (岩波文庫)


 昨年9月から、コツコツ読み進めてたのがようやく終わりました。ついにやってやったぜ。
 古本屋で入手した岩波文庫で、中身が旧漢字、おまけに1冊あたりのボリュームも大きいのが全10冊。さすがに骨が折れました。他の本も並行して読んでいたとはいえ、まさか半年かかるとは……。


 本書の内容が、その後の歴史学の発展によりかなり更新の余地がある古い内容であり、またギボン個人の観点からくる記述の偏りなんかも散見されるという批判はネットで見かけました。そういう意味で、本書の内容を鵜呑みにしてそれで終わりというわけにはいかない。また、その「古さ」がどの程度なのかつかめていない私には、本書の情報をどの程度使って良いのかも分からないわけです。
 また、私は西洋史は今まで大の苦手にしていた次第で、本書の内容のうちどのくらいが頭に入ったかというと、おそらく1割にも満たないでしょう。
 それでも、これを読んだ事は決して無駄にはなっていない。それは確信しています。


 分かる分からないとは別に、一定時間、その対象に取り組んだっていう感覚は、それ自体が絶大な効果を自分自身にもたらすのですよね。自信がつく。
 高校で世界史の授業あったけど、ほとんど覚えていません。時代と共に国境線が、王朝がぐりぐり変わって、慣れない横文字の人名が大量に出てきて、ものすごい苦手なままこの歳になってしまいました。
 本書は何よりも、私の中の苦手意識を追い出すのに、最適だったと思います。とにかく、上っ面だけだろうと通り一遍だろうと、とりあえず知っていない事には興味も関心も持ちようがないというのがあって、本書はヨーロッパ史の「通り一遍」をインプットするには恐らく最上だったんじゃないでしょうかね。
 恐らく、今後私が読書をする中で、歴代ローマ皇帝や、ビザンツ帝国、トルコの王朝名、あるいは十字軍なんて文字を見かけたとしても、もう怖がりはしないのだろうと。今までは、そういうのでとっさに怯んだりしていたわけですが、多分、もう怖くない。
 この自信が欲しかったんですよ。これだけで、もう値千金なのです。


 また、内容とは別に、こんだけの長さの本を読めたっていう、ボリュームに対する自信にも、多分なっていくでしょう。全3巻くらいの本なら、躊躇せずに挑めるんじゃないかな、という感じ。
 前述の通り古本屋でこれを買ったのですが、全10冊のうち最初の1冊には開き癖も少しついてるし多少汚れもあったのに、2巻以降はまっさらに綺麗で、「あぁ……(察し」という状態になったのですよね(笑)。何となく、前の持ち主に勝ったぞ! 的な感興もありつつ。
 そんなような、充実感はかなり感じております。


 個別の感興については、まぁ並べればきりがありません。こんだけの長さですからね。
 ただつくづく印象深かったのは……1000年以上の期間を扱っていることを割り引いても、一体この本で言及された「殺害された人の数」って何億人くらいになるんだべ、という事でした。武装した兵士を除いて、単純に非戦闘員に限っても、とんでもない膨大な死者の数がゴロゴロ無造作に書かれている事に、わりと戦慄したんですよね。
 21世紀の日本という平和な国に住んでるのはもちろん、世界全体で見ても戦争法というもんがそれなりに尊重されてる時代に生きてるんであまり意識しませんでしたが、そういうのが無い状態ってこんなにシビアだったのだなぁ、と。そういう肌触りは、さすがに色々と考えさせられたのでした。
 そんな感じで。


 ゲームのミッションとかで、一つクリアすると挑戦可能になるミッションが新たに開放されたりしますが、私の読書において、本書を読んだことでトライ可能になった本や領域はおそらくとんでもない広範囲になるはずです。その事に胸を躍らせつつ、でも当面そこに挑むのは我慢して(笑)、引き続き基本図書を追う日々に戻りたいと思います。