アーサー王の死


アーサー王の死 (ちくま文庫―中世文学集)

アーサー王の死 (ちくま文庫―中世文学集)


 アーサー王伝説はもちろん気になってたわけですが、いまいちどれを読んだら良いのか判断つきかねる状態だったりしました。最近、ちくま文庫に比較的古いものが訳出されて入ってる事を知ったので手に取ってみた次第。


 まぁ、なんというか、中盤以降どちらかというとランスロットが中心の話になってたりしていろいろ意外だったわけですが。その辺も含めて発見が多々あって楽しかった読書でした。聖杯のイメージとかもね、もちろんTYPE MOONの『Fate』シリーズのイメージになるわけですけれども(笑)、その辺とはかなり違った登場の仕方をしてて、ははぁこうなのか、と思ったり。
 アーサー王に戦いを挑むローマ軍が「巨人」を軍勢に加えてて、先日読んだ『ヘーオウルフ』の巨人や『旧約聖書』のゴリアテはじめとしたペリシテ軍の巨人なども含め、キリスト教文化における巨人の意味がかなり違って見えてきたりとか。


 また、やっぱりいわゆる「騎士道」というのについて、読んでいてある種の気持ちよさは正直あるわけです。敵同士でも相手の技量の高さには必ず感服し褒めるとか。特撮ヒーローについてよくある「変身中に攻撃してはならない」というネタじゃないですが、相手が鎧を身に着けて準備万端整うのを待って「では始めよう」みたいな戦いの段取りとかね。もちろんこれは物語なわけで、現実の戦いがこのようであったかどうかは私はあまりよく知りませんが……うーん。私がTwitterなんかでたびたび言及している『ガンダムW』のトレーズ閣下のセリフ、「礼節を忘れた戦争は殺戮しか生まないのだ」というアレと合わせて、やっぱり色々考えてしまうのでした。


 そんな感じで、なんだかんだ原典に当たると様々に考えるテーマが見つかるもので、充実していたと思います。
 気になったのは本書では一部原書に対して省略があるところと……あとはおそらく原文では「ドラゴン」になってると思われるところを何故か「恐竜」って訳してあることくらいかな(笑)。よもや中世騎士道物語に「ダイナソー」なんて出て来ないよね?w
 海外翻訳ものをここ2年くらい読んでて、やはり「これ原文どうなっとるんや」と思うことはたびたびあり。どうも、いよいよもって英語くらいは読めるようにならんといかんかなーというぼんやりとした意識を持つようになったこのごろです。まぁ、語学はどうにも苦手なんで及び腰ですが。