アーサー王の甥ガウェインの成長記


アーサーの甥ガウェインの成長記―中世ラテン騎士物語

アーサーの甥ガウェインの成長記―中世ラテン騎士物語


 たまたま書店で見かけて衝動買い。中世に書かれた、アーサー王伝説関連の騎士物語の一つということで。
 昨年、マロリー『アーサー王の死』を読んだことでようやく念願のアーサー王伝説に触れられたわけですが、それ以外にも関連する作品は色々あるようで。とりあえず日本語で読める形で手に入るのはありがたいなーという事で、読んでみた。


 物語としては、解説にもある通りわりとシンプルな貴種流離譚。特に難しいと感じるようなところもなくシンプルに楽しく読みました。
 そんな中、突出して面白かったのは、やはり話の本筋から外れて、中世ヨーロッパにその名を知られた焼夷兵器「ギリシャ火薬」の製法が事細かに述べられているところ。しかも、瀝青や硫黄など実際に有効そうな材料と、やれヒキガエルだのオオカミの睾丸だの竜の血だのといった怪しげな材料とが併記されていたりして、最近こういう中世の怪しいレシピ(魔女のつくる薬とかの記述でよく出て来る)をメモるのがマイブームな私をいたく喜ばせたのでした(笑)。その上注釈によれば、この部分はギリシャ火薬の製法に関する記述としては最古級のものの一つであるとかで。
 アーサー王伝説関連を軽くおさえる程度のつもりだったので、そんなものが載っているとは予想もしていなかったので驚いたわけですが。しかし、むしろそういう予想もつかなかったモノと不意に出会っちゃったりするのが原典を読む楽しみでもあるなと。


 アーサー王伝説という関連で言えば、『アーサー王の死』も本書も数ある作品の一つで、本書を読んだからとて全貌がつかめるわけでは無いのでしょうけれども。それでも、当たれる範囲で原典に当たっておくと意外に発見があったりするもので、なかなか楽しい読書でありました。敵に押されて敗走するアーサー王とかいう珍しい場面も出てきたり、本作ならではの場面もあるということで、作品ごと時代ごとのイメージの変遷も掴むのは大変そうです。
 まぁでも、とりあえずは作品単独として楽しみました。
 さて次。