ギリシア記


ギリシア記

ギリシア記


 今年に入ってから、母校の大学図書館に通うようになりました。OBは会費払えば図書館に入れるのです(貸出は利用できないのですけども)。
 そんなわけで、以前から気になっていた、けど自分が入手するのは大変そうな本を出向いては読み、出向いては読み、というのをやっていたわけです。


 本書は、以前岩波文庫版を読んで大変面白く、しかし抄訳で全体の3割くらいしか読めなかった本の全訳版。「いつか全部読んでやりたい」と言ってから一年半ほどで思惑がかなった次第です。まぁ、半年かかってしまいましたが。


 私がこの本の何に惹かれたかといえば、その土地土地のローカルな伝承とか祭礼なんかを記録してる事なんですよ。アポロドーロスとかによってまとめられた『ギリシア神話』というのがあるわけですけど、その土地土地で異伝もあるしバリエーションもある。「ゼウス神が生まれ育ったの、あれはオラが村だから」みたいな事を現地の人は主張してたりするわけです。そういうのが色々拾えるという意味で、なかなか面白かったり。
 『オデュッセイア』で無法な求婚者たちを退けてハッピーエンドになったはずのオデュッセウスとペネロペ、とある土地ではペネロペが求婚者を引き込んだとオデュッセウスに勘違いされて屋敷を追い出され、当地で亡くなりました、そのお墓がこれです、みたいな逸話になってたりするわけです。他にも、メデューサが相手を石に変える女怪ではなく、とある地域を荒らしていた蛮族の女傑だったみたいな異説も載ってたりして。


 とにかく膨大な示唆を受けて、あらためて楽しい読書でした。地味だけど、こういう本をコツコツ読んで蓄積していくと色々広がりそうだなというところで、引き続き体力に余力がある時にでも図書館通いを続けようかと思っています。はてさて、どこまで行けるのやら。
 とりあえずそんな感じで。