黄金伝説


黄金伝説〈1〉 (1979年)

黄金伝説〈1〉 (1979年)


 大学図書館でちまちま読んでいたもの。全4巻の大著。なかなか大変でした。
 キリスト教の聖人伝を中心とした伝説・説話集。FGOのお陰で最近とみに名前を聞くようになった聖ゲオルギウスや聖マルタなどの話も含んでいます。
 当初は、あくまで説話集の一つとして、話のモチーフを中心に集める程度という認識で読み始めたのですが、いざ取り組んでみるとやはり中世キリスト教の世界観や思想というものを考えざるを得なくなって、思ってたより深刻に唸りながら読むハメになったという感じです。
 聖人の一人が、キリスト教への信仰を捨てて既存の神々への帰依をしないと拷問するぞと脅された時に、啖呵きるわけですよ。もう大雑把に要約すると、「望むところだ、こちとら伊達に十字架という拷問処刑具をシンボルにしてないぞ」と。
 さらに、比較的迫害の無い時代に生まれた司教が、「殉教の冠が得られないのは残念なことだ」と言い始めたりする。
 ともかくほぼ全篇にわたって、血生臭い拷問拷問また拷問という展開が続くわけです。さすがにねぇ、一体なんだろうこれ、と考えさせられざるを得ない。『新約聖書外典』を読んだ辺りから、なんとなく「キリスト教の伝播が殉教を構造的に織り込んだ形で進んでいる」印象は持っていましたが、ここまで強調されるとどうにも。
 また、禁欲的な傾向も『新約聖書外典』以上に進んでいて。大体登場する殉教聖女って絶世の美人なんですが、美人であるが故に男に言い寄られ、それを断るのが発端となって拷問から殉教コースに入るわけです。さらに聖母マリア様にいたっては、絶世の美女でありながら、他の聖女よりもさらに段違いの聖性により周囲の男に一切劣情を抱かせなかったとか。


 どうもその辺の違いに戸惑ったりはしましたが、一方で面白いネタもたくさん拾えたので、非常に有意義な読書でありました。
 まぁ、ちまちまとですけど、これくらいの原典読みを地道にやっていくのは続けていきたいですねぇ。こればっかりは続けないと意味が無いので。
 ぼちぼちと。