浜村渚の計算ノート1

浜村渚の計算ノート (講談社文庫)

浜村渚の計算ノート (講談社文庫)


 数学などの、学問関係のネタを組み入れたエンタメ作品にはどうにも興味があって、その流れで手に取りました。


 うーん。中学生の少女をメインの登場人物にするために、かなり無理やりな設定が最初に敷かれてる感じがあって、少し気になった部分はありました。
 あと、『数学ガール』シリーズなんかを好んで手に取っているような読者にとっては、やはり食い足りなく感じる部分はあるかなと。メインの対象読者は、普段数学に全然興味がないような、むしろ数式アレルギー的な人になるのかなと。


 まぁしかし、難しい本読んだり、難しい事考えたりした後、リラックスして何も考えずに読めるものが欲しい、といった時なら、程よいんじゃないかなという程度の軽さです。息抜きにはちょうど良いかなという。
 主人公の浜村渚のキャラクターとかも嫌いではないので、気が向いたら続きも読むかも知れません。



 それにしても、理系教育の迫害に抗議するテロ組織て、ひどい設定ですけど(笑)、現実にも理系方面の待遇のひどさは聞くので、微妙な失笑をしてしまいますねぇ。
 日本だと、ノーベル賞とるような研究をしても、給料はプロ野球選手の十分の一くらいだとかいう話もツイッターやってると聞こえてきたりするわけで。「ものづくり大国日本」とかいう割には、そのための開発に必要な研究をやってる人たちの待遇は全然さびしくて。そういう諸々の理系への無理解が下敷きにあるのは分かるんですけどね。
 しかし、だからって復讐に走ったら、「理系vs文系」の不毛な対立をむしろ強化するだけだよなぁとか……いやフィクションの中の話なんで別に良いんですけど。


 個々のエピソードのアイディアなんかは面白いものもあるんですが、なんか全体の設定部分で、微妙に尻のすわりの悪い感じがしなくもない、ちょっとそんな読後感でした。