コミPo!つかってみた



 新しいもの好きなので、こういうソフトにはつい手を出してしまいます。
 そんなわけで、絵を描けなくても漫画が作れるという触れ込みのコミPo!を使ってみたりしたので、現在の実力、ポテンシャル、および物足りない事などをつらつらと。
 買おうかどうか迷ってる方の参考にでもなれば、などと。



とりあえず、2年前に書いた小説『夜桜とナリヒラ』 http://www.dnovels.net/bodies/detail/5293 を、コミPo!で漫画化してみたのがこちら↓
http://www.comee.jp/fileview.php?fileid=1566


 こんな感じで使ってみての感想です。



   ・インプレッション

 操作方法は分かりやすく、直感でけっこうスラスラいけます。基本操作だけなら大して時間かからないうちに慣れるハズ。分からないところはマニュアル見たり、いろいろ試行錯誤で。出来る事の多彩さに比べるとかなりシンプルな感じ。


 ただし、まだ黎明期のソフトなせいもありますが、具体的に出来ることの自由度は現状、あまり広くありません。とりあえず学園モノと、頑張って現代日本が舞台のもの。ジャンルはギャグ、ラブコメ辺りに素材が寄っており、シリアスな作品を作りたい人はかなり限られた素材の中でやりくりする必要が出てくる印象。
 また、ポーズもあらかじめ用意されたものの中から選ぶしかなく、自分でポーズをつけさせたりは出来ないので、バトルものとかやりたい人もかなりストレスたまると思います。


 まして、異世界ファンタジーなどは当面実現不可能と考えて差し支えないでしょう。


 とりあえず、公式HPや、ツイッターの #comipo タグで時々貼られる作品とかを適当に眺めて、現状使える素材の範囲内でやりたい事がある人には好適、という感じでしょうか。基本的には。
 気軽な4コマ漫画を作りたい人とか。あと、漫画形式で分かりやすく「○○講座」みたいなのを作りたい人には、使いやすいかも知れません。ユーザーの用意した画像も読み込んで使えるので。


 3Dソフト「メタセコイア」で作ったデータを読み込んで使える上、ユーザーが作った3Dデータの小物を配布するサイトなんかも複数あるので、小物や小道具なんかは今後充実していくと思います。自作品キャラ専用の小道具とかも、メタセコイアをいじれるスキルのある人なら出来るかも知れませんが……ちょっとハードル高いか。



 どうしても、使える絵柄・素材などの範囲内で作る事になるので、オリジナルの世界観を持ってる作者の人が、それを表現しようとすると露骨に限界を感じてしまうと思います。
 むしろ、「その範囲内で何ができるか」から発想して、他のユーザーさんたちと表現を競い合うソフト、だと割り切った方が楽しめるかも知れないというのが現在のコミPo!でしょうかね。
 これは必ずしもネガティブな評価ではありません。こういう、時間をかけて拡張していくしかないソフトというのは、初期のうちはどうしても出来る事が限られますので。
 不如意な中で、徐々に新しく出来る事を発見していく楽しみというのは、黎明期にしかないものなので、そういうのが好きな人にはむしろオススメです。MMDで新しく技術革新が起こるたびに興奮できる人とか向け(笑)。



   ・ポテンシャルのこと


 コミPo!はとりあえずは、既存の漫画の表現を真似る事ができるシーケンサーという形になっています。
 ただ、ツイッターでも書きましたが、私は長期的にはもう少し、このソフトの潜在能力を高めに見ています。
 コミPo!を使って作品を作る感覚というのは、既存の漫画を描く時の感覚とはまた違うからです。3Dのキャラクターやアイテムを画面内に配置し、角度を調整し、色調などもその場に合わせて調整していく。背景や吹き出し、効果線などもレイヤーの形で管理して……というように、全然方法が違います。
 そして、方法が違うところには、違う表現が生まれる可能性があります。


 ワープロやパソコンが登場して、キーボードで文章を打つようになった事で、小説を書く感覚が変わったように、です。
 小説は、原稿用紙に書かないようになって、デジタル上で校正が自由に何度でも出来るようになり、また漢字変換機能によって、難解な漢字も気軽に使えるようになりました。
 その結果、京極夏彦みたいに文章が終わる(文末の)位置を揃えたり、階段状に段々文章を短くしていって視覚的に見栄えがするようにしたり、というような表現方法が一時期意識されたりしました(最近はあまり聞きませんが)。また、漢字変換の気軽さは、90年代後半の新本格ミステリーの衒学的傾向や、最近のライトノベルの傾向(人名にやたら難しい漢字を使ったり、セリフが複雑な漢語や造語で入り乱れたりする、奈須きのこ西尾維新以来の傾向)などにも確実に影響を与えているものと思われます。


 つまり、ツールが変わる事で、出力される表現にも変化が起こりますし、工夫次第では今まで見た事のない表現が生まれる可能性もあるという事です。
 もちろん、そのためにはユーザーの裾野が広がっている必要はありますが。



 そんなわけで、現状、私はコミPo!の将来的な可能性というのを楽しみに、時々ソフトをいじっている状態です。
 実際にどうなるかは分かりませんが……どうせいじるなら、先行きを楽しみに、盛り上がってやった方が良いので(笑)。



   ・一番必要なもの


 前述のように、コミPo!はまだ始まったばかりのソフトで、制作スタッフの方々も試行錯誤しながら進めている状態であり、「足りないもの」は挙げればきりがありません。
 また、その優先順位も人によってまちまちでしょう。
 それを承知の上で、個人的に最優先ではないかと思われる事項を綴っておきます。


 キャラクターをエディットするための、各種要素の大幅な増量です。



 この記事を書いている5月24日の時点で、有料で夏制服が追加されましたが、それを含めてもなお、キャラクターを作るためのエディット要素は圧倒的に足りません。
 特に、髪型・髪色、制服や私服以外の各種服装、靴とか首回りのアクセサリーとか、さらに可能ならばある程度の体型エディットまで、将来的にはかなり拡張する必要があるかと思います。
 現状では、100人単位の人がコミPo!でオリジナル作品を作ろうとした場合、キャラクターの完全丸かぶりを含めた、まったく見分けのつかない状態が起きかねないと思います。


 斉藤環氏によれば、キャラクターとは「複数の虚構世界内で、一貫して同一性が認識される存在」とのこと。
 また私も以前、小説においていかにキャラクターを立てるかという講座の中で、以下のように述べた事があります。


  グーグルの画像検索画面で、「フランドール・スカーレット」と入力、検索してみてください。結果は以下の通り↓
http://images.google.co.jp/images?sourceid=navclient&hl=ja&rlz=1T4GZEZ_jaJP238JP238&q=%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88&um=1&ie=UTF-8&sa=N&tab=wi


 東方系作品が嫌いな方もいるかと思いますが、ちょっとだけ上の結果を見てみてください。重要なのは、「全然絵柄の違う絵描きが描いても、同じキャラクターだとわかる」事なのですよ。
 絵の中にはかなり細部まで描きこんだ劇画調なものから、アニメ調のもの、デフォルメされたもの、さらにはフィギュアの画像までありますが、いずれも「同じキャラ」だと判別できます。髪の色や服装、背中の特徴的な羽根の造形や手に持っているものなどによって、どんな絵柄の絵描きさんが描いても「そのキャラ」になります。他のキャラに見間違えられる事はありません。

 ……実際、東方Projectの「キャラクター」づけというのは実に徹底されていて、シルエットだけでも大体どれがどのキャラクターかが判別できるほどです。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8628149


 それがキャラクターというものの本質なので。そして、エンターテインメント的な作品を作ろうとする場合、キャラクターを立てるというのは必須の条項だといっても良いでしょう。


 ですから、コミPo!を使用して本格的なエンタメ作品を作りたい! という層に参加してもらおうと思えば、キャラクターに「無二の特徴」を付加するための、髪や服装や小道具の充実は不可欠だと考えるわけです。
 現在のコミPo!にとって、キャラクター作りが思い通りにいかない事は、大きなウィークポイントであると思われます。



 逆に、もしこうした「キャラクター作り」が幅広く可能になった場合、コミPo!ならではの世界が開ける可能性があるのかなと思います。
 コミPo!によるキャラクターのデータは、共有、交換が可能です。
 という事は、ユーザーが作ったキャラクターを同意の下で共有した場合、他のユーザーキャラの作品内へのゲスト登場、シェアワールド、リレーコミック、クロスオーバーなどが可能になってきます。


 特にリレー形式の創作というのは、小説ではさかんに行われていますが、漫画だと今までは描き手同士の絵柄の違いや、また手間などから今まであまり行われたことがないかも知れません。
 こういう事がコミPo!で特に新しく行われる事になれば、面白くなるかも知れません。


 まあ、今のところは「そうなったら良いな」程度の思いつきですが、これもコミPo!の潜在的な可能性に数えて良いように思うのですよ。



 他にも、今後の展開次第で、新しい可能性はいろいろ見えてくる、そんな先の楽しみなソフトだと個人的には思っています。


 そうした「可能性」に先行投資して、一緒に盛り上がれる仲間がどうか増えますようにと願いつつ。



コミPo! 公式
http://www.comipo.com/index.html