艦隊これくしょん 一航戦、出ます! 1巻



 やんごとない事情でちょっと艦これノベライズを読んでみる。ライトノベル読むの久しぶりだわ……。
 なんかこう、このブログでライトノベル読むたびに、「地の文で説明を書き過ぎる」「これでは余韻や含みが生まれない」的な事を何度も書いてきましたけど、これはむしろ私の読み方が違うのかな、という気がしてきました。私はやっぱ無意識に、姿勢を正して集中して読む、みたいな読み方を想定していたんですけど、もっと軽く、流しながら読むとちょうどいい濃さになってるのかもな……というのを、本書を艦これのデイリー任務回しながら読んでたら気づいたのでした(笑)。ながら読書するくらいだと、ちょうどいいのね、ラノベの文体。


 まぁでも、艦これというゲームを物語化するという事の困難さが十全に表現されている作品でありました(笑)。元来、軍艦を美少女化するという最上級にバカバカしい発想から始まっている世界なわけで、どこまで行ってもシュールにならざるを得ないという宿命があるわけですよ。私が艦これノベライズを読むとしたら、そこを物語作者の剛腕でどうねじ伏せるか、という辺りを楽しむという読み方になるわけでありまして……およそ、この本の読者としては最高に無粋な読み手でありましょう。


 で、いっそのこと「妖精さん」を大きく取り上げる事で、ファンタジー方向に大きく舵を切ったのは、当然あり得る戦略だよなぁと思って見ていた事でした。まぁお蔭で、「妖精さんに賄賂の羊羹を渡したら新型偵察機が開発された」とかいう、単独で文字だけ見たらまったく意味不明なシュール展開になったわけだけど(笑)。
 作品の時代も技術レベルも世界観もすべて曖昧にならざるを得ないという、かなり致命的なウィークポイントを生んでしまうにしても、それでもこと「艦これ」という題材に対していは、これが比較的妥当な落としどころなのですよね。下手に突っ込んだ事を書いたり出したりしたら、いろんな立場の人からポリティカルなツッコミやイチャモンを食らう可能性が常にあるわけなので(この辺はアニメ版の艦これも抱えているジレンマなわけですが)。
 またそういう話を抜きにしても、端的に作中の時代とか世界観設定とかをかっちり決めると、あっという間に矛盾だらけに陥りかねないという厄介さのある原作でもあります。時代は現代なのか過去のどこかなのか未来なのか、どことも決めがたいわけですよ。戦時中の話にするには一部艦娘たちは垢抜けすぎているし、かといって補給物資をドラム缶で運ばなきゃならないような状況ってあまりにも限られている(笑)。
 とはいえ、ここまでファンタジー方向に舵を切るなら、もういっそのこと(私は未読だけど)『ゼロの使い魔』辺りともそんなに遠くないのではないかという気もしてきます(笑)。


 ストーリーについては、空母機動艦隊の戦い、水雷戦隊の戦い、巨視的な戦略と様々に目配りされていて、詰め込んだわりにはよくまとまっているのかなという印象は持ちました。
 作者さんは架空戦記なんかを書いてた方という事で、さすがに兵器まわりの描写・説明は上手い。しかしそうであればこそ、「どう見ても海面に立っているようにしか見えない艦娘になぜ魚雷などの水中へ向けた攻撃が当たるのか」といった説明がシュールになる辺りがまた痛し痒しというか……(笑)。
 まぁ値段分は楽しんだと思います。ただこちらは、続きを買うかどうかは若干不透明。
 さて。