TYPE-MOONの軌跡
- 作者: 坂上秋成,武内崇,TYPE-MOON
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/11/25
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (2件) を見る
最近FGOやってることもあり。たまたま目についたんで買って来た。
Twitterの方では何度か言ってるわけですが、初音ミク、TYPE-MOO、あるいは東方とか、あの辺の同人誌やネット発の文化である程度以上にメジャーな方にまで影響力を持っているタイトルや人や作品について、後世ちゃんと経緯や背景がわかるように歴史的にあとづけておく仕事はもっと必要だよな、と。初音ミクについては『初音ミクはなぜ世界を変えたのか』という労作があって、かなり上出来だったので少し安心しましたが、まだまだきちんと記述されてないものは多い気がする。TYPE-MOONもその一つだよなと思ってました。
本書を手に取ったというのは、だから、そういう応援の意味が多分にあります。
とはいえ感想は率直に書くけれども。
うむ。作者の型月愛はすごく伝わって来るんですけれども、むしろ好きだからこそまとまってない感じがすごいした、というのが正直なところ。まぁ、とことん愛着あるものを語るのって難しいんですよ、好きであればあるほど客観的になれないから。
章立てはすごく整っていたと思います。TYPE-MOONのこれまでの動向を語るにはちょうどいい配分と構成かなぁと。しかし中身については、ちょっと食い足りない感じが否めないという。
型月作品以外への言及はほとんど無いので、同時代の流れの中でどう位置付けるかみたいな議論が弱いし、一方で制作裏話として読もうとするとあまりにもその辺の記述が少ないし。まして、奈須きのこの長大で複雑でこんがらがった作品世界を、作品未読の人にも分かるようにこの分量で語るのはいくらなんでも難しい。
結果として、かなりどっちつかずな内容だと感じた次第でした。
まぁでも、「Fate/Grand Orderとかいうゲームがやたら売れてるけど、あれ何なんだ?」という、主にマーケティングとか経済関係の人が下調べのつもりでこれ読んで、目を廻して混乱したりするならそれはそれで楽しくもありますが(笑)。
FGOがなんであんなに売れてるのか、に関する業界での分析とかをたまに見ても、なんか全然実態を掴めてないような印象がけっこうありまして。『空の境界』がいきなり劇場版7本で公開とかいうのも含めて、業界のセオリーからは考えられないようなことをあの作者あの会社はよくやってるわけですけれども、「にも関わらずなんで売れてるのか」みたいな事を、経済や売り上げ方面から観察してる人が全然、ニュアンスすら掴めてないような。
でも、けっきょくそこが掴めない限り、せっかく面白くなりそうな作品も「売るための都合」でつまらなくしてしまってダメになる、みたいな馬鹿な事をいつまでも続けることになるわけで、その辺を考えてもらうちょっとしたきっかけにでもなるなら、十分良い仕事になったんじゃないかという気もします。
そんな感じ。