ビーグル号航海記

新訳 ビーグル号航海記 上

新訳 ビーグル号航海記 上

新訳 ビーグル号航海記 下

新訳 ビーグル号航海記 下


 寝る前にちまちま読んでいた、ダーウィンの航海記。
 睡眠導入がてら読む本ってわりと選定が難しいんですけど(込み入った本だと居眠りながら読んでわからなくなりそうで)、航海記なんかは短く区切られてて途中で切りやすいので、わりと良さそうなんじゃないかと。


 当然ながら、進化論の発送元ということで生物学関連の記述が多かろうと思って読み始めたわけですが、実際に読んでみると思ったよりそれ以外の記述が多かったという。特に南米の政治的動向とかがやけに詳しく。特に、先住民の苛烈な境遇というのがどうしても見えてくるわけで、その辺を通覧していくうちに、予想外の暗い読み味になったり。


 また、かなり詳細なのが地質学に関する言及でした。これも下手したら動物への言及より多いかもしれないくらい。環礁の形成に関する仮説を長々と述べていたりして、けっこう力が入っていたようです。
 しかし思い返してみれば、『種の起原』における進化論も、通常の動物一個体の誕生から死までという短いスパンではなく、地質学の歴史と並走するようなロングスパンで考えたが故に出て来たのだろう側面が感じられたので(『種の起原』中にも地質学に関する言及は複数あったと記憶します)、なるほどそう考えてみると納得な内容でした。


 無論、生物学に関する記述が少ないわけではありません。さすがに一行がガラパゴス諸島に到着してからの内容はかなり興奮して読みました。
 他にも、登山したりジャングルに分け入ったり、なかなかの冒険ぶりが垣間見えてなかなか楽しい読書でありました。


 あと、そう、「セントエルモの火」という海上で見られる怪火がありますが、なんとダーウィンも目撃していたんですね。わりと詳細に記録されていて、なかなか興味深く読みました。こういうのを発見できるので、原典に当たってみるのもたまには悪くないなぁと。


 そんな感じで。のんびり数ページずつ読み進めるのにちょうどいい内容でありました。