幻想譚グリモアリス 1



 遅ればせながら読んでみた。
 以前富士見ミステリー文庫から出ていたシリーズが、ファンタジア文庫に移動しての新シリーズということらしい。
 まあ、それだけミステリー文庫の中では売れたシリーズの一つだったんでしょうね。で、内容的にも、ミステリー部分を強調しなくても行ける世界観だったんで、まあ下衆の勘ぐりですがファンタジア文庫の方のキラーコンテンツにしたくて持ってきたのかなぁ、という感じ。


 とはいえこの移籍は、書き手にとってはかなり難しい舵取りを迫られたんだろうなぁ、とも思います。
 レーベルが変わってここから入ってくる読者を意識しすぎれば、既存のミステリー文庫の方を読んでいた読者は「核心に至るまでが遠い」「既に知っている設定説明ばかりで退屈」ってな事になるし。
 一方既存の読者を意識しすぎれば、当然ここから入った新しい読者は置いてけぼりにされる。


 無論、この作者なりに色々工夫はしていると思います。主人公を記憶喪失にしたのはその一番分かりやすい例。
 他にもこまごまと、「ああー何か色々苦心の痕跡が見えるなぁ」という感じなんですが……それでも完全に成功したかというと、微妙だなという部分は多く。
 何より、話の都合で、メインヒロインでありこのシリーズ一番の花であるアコニットさんにたどり着くまでがすごい長いんですよね。やっぱ既存作品のファンは、何だかんだでアコニットさんに会いたくてこのシリーズを手に取るってケースが多いだろうし。彼女と誓護君とのやり取りをニヨニヨしながら眺めていたい派のファンにとっては、やっぱり序盤の展開は長く感じると思うし。
 一方、ここから入った新しい読者はといえば、どうにか頑張って、矢継ぎ早に知らされる既存作品の設定をどうにか飲み込むとしても、結局アコニットさんがどれだけ凄いか、どれだけ強いかってのをあんまり見られないまま本を閉じる事になります。
 もちろん、結構激しくバトってるわけで、能力の強さはそれなりに描写されてますが……ほら、アコニットさんの魅力って本来、自分の側が優位な時に見せる高飛車な態度じゃないですか。それでいて誓護にはデレるところじゃないですか(笑)。それが今回、ずっと追い詰められっぱなしで余裕がないんですよねぇ。それだけで読者の印象はかなり違うとおもう。


 また、この新シリーズで新たに誓護君がアイテム経由で、教誨師に太刀打ちできる能力を得るわけなんですが……個人的には、彼には本当に「知恵だけ」で立ち回って欲しかった。無論、かなり無茶な希望ではあるんですが、それでも。私は誓護君の小ずるい、それでも物凄く切れ味鋭い知恵の回りっぷりが大好きなので。本当に機転だけで毎回戦ってくれたら、私の評価はもう二段階くらい上がったかも。
 ……と、そんなわけで割りと辛い事書きましたが。
 それでも一つだけ、私が絶賛してやまない部分があります。


 軋軋君が最高だ。大好きだ(えぇ〜


 もうね、彼のキャラクターが良い。良すぎるのですよ。文句たらたらの癖に、変なところ愚直で律儀。私の一番ツボなキャラなんですな(笑)。ある意味ヒロインよりさらにツンデレだしw
 とりあえず私は軋軋君のためだけに、このシリーズ追ってもいいよ。それくらい好き。


 そんな感じ。さてさて、続きは出るんでしょうかね。