科学の国のアリス
- 作者: 福江純
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2005/05
- メディア: 単行本
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今日日、伝奇物語の書き手といえども、基本的な自然科学の素養なくしてはやってられないのは皆様ご存知の通りです。
まして、上海アリス幻樂団のZUN氏を敬愛している私としては、なおのこと。
そういうわけで、ニュートン物理学の入門書(アリスつき)。
元よりバリバリの文系人間である私、物理に関する知識なんて中学レベル止まりですが、まあ私は(常連さんはご存知の通り)ルイス・キャロルの眷族です。アリス・リデルが案内してくれるというなら、どこまででも行けます(えぇ
否。アリスだけではありません。
たとえば、光の話。光が波なのか粒なのかという話題については、同人ゲーム『東方文花帖』での八雲紫のスペルカード(シューティングゲームの弾幕)「波と粒の境界」を思い返しました。
また、磁石の話で、S極を持たないN極だけの磁石があるか、という記述では、『Q.E.D.』というミステリー漫画で燈馬想くんがモノポールの話をしてたよな、と思い出しました。
実は、オタクは勉強をする上で、すごく恵まれてるんだよなぁ、とこの本を読みながら改めて思ったのでした。
普通勉強というのは、結局最後には本と向き合うだけの孤独な作業になります。ゼミの先生や学友に熱心な人がいればまた違ってくるでしょうが、そういう巡り合いを持たなかった人も多いでしょうし。
その点、今はいろいろなエンタテインメント作品が、学問分野まで貪欲に吸収して作品に取り込んでいたりしますし。そういう作品のキャラクターたちを案内役に、楽しく勉強を進める事だって出来るんだよなぁ、とか。
実際、私がそれなりに民俗学だの神話学だのの本をこれまで読んでこれたのは、京極堂や宗像教授の導きがあったからにほかなりません(笑)。
そういう意味では、学問を純粋に「楽しむ」ことの一番近くにいるのは、あるいはオタクたちなのかもなー、と思ったりする今日このごろです。何かのためにするんじゃなくて、ね。
この本も非常に面白かったです。もう本当にさわりの部分でしかないんでしょうが、それでもいろいろと楽しい発見がいくつかありました。
一番びっくりしたのは電磁波の話ですかね。
電気の流れるコイルを釘に巻きつけると磁石になる、つまり電流は磁界を生み出す。
で、逆にくるくる巻いたコイルの中に棒磁石を抜いたり挿したりすると電気が流れる。そんな具合に電気は磁気を、磁気は電気を生むと。
本来、音波にしても何にしても、その波を伝える空気などの媒体がないと伝わる事はできないのですが、この電磁波だけは電気が磁気を、磁気が電気をという風に次々互いを作っていく事で、なにも媒質がない真空でも伝わっていくんだとか。
おお、すげー。
なんかアレですね、右足が沈む前に左足を踏み出せば水の上を歩けるよ、みたいな感じ?(全然違います
そんなわけで、全編楽しく読みました。イラストも楽しく、軽い気持ちで読めるので非常に良い本ですね。