第6回 日比谷・赤坂散歩


 実は、これを実行したのが7月12日なんですけどね。もう10日以上前だ。
 一応それなりに物覚えは良いつもりですが、それでも出来るだけ記事に起こすのは早い方が良い。もっと頑張らなきゃなぁ。
 ともあれ、今回も方向性の定まらない、東京彷徨、第6回。





 今回の出発地は銀座。どうせなら普段行かないところに行くのが良いだろうという事ですね。ここから日本橋方向に行ってみようかとおぼろげに考えていたのですが。



 地下鉄銀座駅を降りて外に出て、近辺の地図を眺めてみると、近くに日比谷公園があるらしい。じゃあ、そっちを先に見てみようかと思って歩きだします。



ちょっと歩けばもう有楽町。わりとゆったりした町並み。ついでに天気は曇天。



時刻は1時で、映画館のからくり時計が動き出したところ。



 今回、出発がちょっと遅めでしたね。


 とりとめもなく歩くうちに、周囲はだんだんとオフィス街……というより、高くて主張の強い、いかめしいビルばかりの町並みへ。



農林中央金庫ビル。何かやたらプレッシャーを感じます(笑)。


 他にも銀行の本社ビルとかありましたが、何とも綺麗な建物なのだけれども、私のごとき小市民にはやはりものすごい威圧感がありますね。


 逃げるように、日比谷公園へ向かいました。
 なんだかんだで、どんな都会の真ん中にもこうして公園があるのは良い事。



公園内の庭園。なかなか良い所です。涼しげだし。
 この日は日曜日だったので、公園にも人がたくさんいました。そういえば、日曜日の東京彷徨は初めてか。いつも私が歩きまわるのは平日だから、公園に来てもスーツ姿のサラリーマンの疲れた姿しか見なかったのですが(笑)。
 この日は私服でくつろぐ人たちも多く。子供づれもいました。


 上の庭園部分からさらに奥へ行くと、花壇を配した広場のようなところへ出ます。そこに野外舞台のようなものがあって、どこかのバンドさんが演奏のための音合わせをしていました。
 エレキギターの音色を背に、公園内をのんびり歩く。



遠方にはやっぱりこんな感じの、ヘンテコな建物が鈴なりに建っています。



 名前は何となく聞いたことのある、日比谷公会堂もありました。なんか古そうな建物。入って良いのかどうなのか分からなかったので、ちょっと眺めてすぐ歩きすぎてしまった。


 で、ここから銀座方向に戻ろうと思ったのですが。
 ふと自分の歩いている道の名前を看板で見てみたら、「国会通り」とか書いてあり。気になって振り返ってみると、例の特徴的な、あの建物が見えてしまったわけです。



例のアレ。


 ……うーむ、見えてしまったからには、行くしかないなぁ。
 というわけで路線変更。国会議事堂へ向けて歩き出しました。


 広々とした道を横目に。途中から上り坂になり、財務省だったかな? なんかの横も通りつつ。
 意外に、省庁の庁舎ってオンボロな感じでした。いかにも古そうで。
 あれかな、最近国民とマスコミの目が厳しいから、そうそう建て替えなんかできないのかな(笑)。


 そうこうしているうちに、国会議事堂前へ来ました。さすがにこの辺は警備が厳しく。強面の警備員さんが大量に立っている中を恐る恐る歩く。



正面から。この格子の間にカメラ突っ込んで撮ればもっときれいに撮れるんですが、警備員こっち見てるし、何か言われたら嫌だからやめた(笑)。



で、国会を背に、正面の道。議員の皆さんはこういう情景を見ながら家路につくんですかね。


 日曜日だったので、国会には特に動きもなく。ていうか参議院側が改修中だったのかな? なんかシートかかってました。
 ちょうどこの日は都議選の日。議員の皆さんはその結果を戦々恐々して見守っていたのでしょう(笑)。



 そのまま、国会の外周にそって歩いてみた。
 笑ったのは、この辺りで妙に時代がかったオープンカーを2台も見かけたこと。サングラスかけた、「オレかっこいいだろ?」系のおじさんが乗ってました。何だろ、この辺確かに道も広いし見晴らしも良いんで、実はそういう車走らせる人たちに人気だったりするのかなw



一方こちらは、国立国会図書館。調べ物をする人たちにとっての最後の頼みの綱。
 私も大学時代、サークル活動の用事で一回だけここに来た事があるはずなんですが……はて、あれは何をしにきたんだったかな? 全然忘れてしまってます(笑)。
 無論日曜日だったので、閉まってました。開いてたら中だけでも眺めて行ったのに残念(傍迷惑


 ここで、気まぐれに国会から離れて別方向へ。国会図書館の横を通って、ずんずん歩いて行くと……



なんだこの難攻不落の要塞みたいな建物は!? と思ったら、これが最高裁判所ですって。おお、さすがの迫力(ぇ


 そしてさらに歩いて行った先に、国立演芸場がありました。



国立演芸場。入口だけ見ると、意外に小じんまりしてます。


 この国立劇場に、「伝統芸能情報館」というものが併設されてまして。入場無料で、歌舞伎で使う楽器などを見る事が出来る場所でした。
 これがけっこう楽しくて、ちょっと時間使って見て回りました。私がぼんやり想像してたより、色んな小道具を使って音を出してるんですね。ざらざらの貝殻2枚をこすりあわせて蛙の鳴き声を再現する、なんていうのはわりと有名ですが。他にもいろいろな、珍しい見た目の道具があって楽しめました。
 けど、木魚だけはそのまま本物使うんだな(笑)。


 また、ここで歌舞伎の演劇と、その舞台裏でのお囃子の演奏風景を取り混ぜて紹介する映像が上映されてたので、ソファに座って鑑賞しながら、しばらく休憩。
 いやでも、こうやって見てみると歌舞伎もけっこう面白い。特に、演目は分かりませんでしたが、終幕にあたって主役級が横並びに並んで見得を切るシーンとか、やっぱり華やかですごいなぁと思ったり。
 いずれ、歌舞伎なんかもゆっくり見られる日が来たら良いんだけどね。



 休憩も済んで、演芸場を出て再び歩き出します。
 途中で地図を見て思案。結果、近くに日枝神社があるという事なので、そちらへ向けて行く事にしました。



途中で発見した、文芸春秋社ビル。


 この辺もちょっと不思議な町並み。何とか会館があったり、ちょっと襟を正した感じ、けどスーツ姿で歩くのもちょっと違うなぁという感じの。
 なんかとんでもなく古い、洋風の建物があるなと思って見てみたら、プリンスホテル赤坂とか書いてあったりして。


 そんなのを眺めているうちに、目の前に立体的な高架道路が。赤坂見附に出たようでした。



赤阪見附跡の緑と、その向こうに見える高層ビル。



で、この金網の下は高速道路につながってるのでした。こういう、普段車移動でしか行けない場所と、自分の徒歩のスケール感が接続すると、何かワクワクします(笑)。



複層的に組み合わされる道。こうやって眺めていると、歩いている人と自動車に乗っている人とでは全然違う景色を見ているんだなぁ、という感じが。



 やがて、道は町中へ。デパートなんかも見えてきて、普通のショッピング街という感じになってきました。
 例によって、目的地をアバウトにしか把握していない私、変な路地裏に余分に迷い込んだりもします。細い坂道にあたりをつけて登って行ったら、日枝神社とか全然関係なく、日比谷高校に行きあたったりもして(笑)。


日比谷高校近くの、蔦の這うレトロな建物と、その背景の超高層ビルのツーショット。あれ、さっきもこんな構図の写真撮らなかったっけ?w


 ちなみに上の写真の高層ビルは、多分この辺りで一番高いんじゃないかな。やたら目立ってました。



 そんな感じでふらついているうちに、ようやく日枝山王神社の鳥居が見えてきました。しかしこれがまた、随分と街中。



すっかり近代的な町並みに溶け込んでしまっている鳥居。


 さらにこの日枝神社に来てびっくりしたのが、なんとここ、神社の境内に登るための専用エスカレーターが設置されてるんです(笑)。



きれいだろ……神社への参道なんだぜ、これ……。
 本当ですよ。公園が併設されてるとか、何かのビルに登るついでとか、そんなんじゃなくて、本当に神社に入るためだけのエスカレーター。これにはちょっと感動しました(笑)。



エスカレーターの降り口には境内案内図も完備。



 なんだろう、ここまで割り切るというか、開き直られるとむしろ清々しいw



日枝神社


 この日枝神社は、江戸城の鎮守であり、江戸三代祭りの一つである山王まつりを行っているところでもある、と。
 建物も華やか、というか派手な感じです(笑)。権現造なのかしらん。



日枝神社の神使は猿。これは比叡山日吉神社もそうですね。
そして日吉神社山王信仰といえば南光坊天海僧正。ただちに宗像教授のあの話を思い出す私は明らかにミーハー(笑)。


 ここで、海外からの観光客らしい女性が、上の猿の像を見て首をかしげてました。まあ珍しいですからね、境内に猿。



もう一枚、今も成長し続ける都市の中にある、日枝神社の風景。
 けど何だろうなぁ。何となくですけど、江戸時代以降に作られた、もしくは興隆した神社って、周囲が都市化していく事に対してもう覚悟を決めてしまっているような感じもあるんですよね。いくら周囲を高層ビルに囲まれても、悲壮感とかミスマッチな感じがあんまりしない。
 実際、江戸という町自体が、当時世界でも有数の都市だったわけで。特にこの日枝神社は、そうやって都市に囲まれてしまう事を最初から織り込み済みであるような、泰然とした雰囲気を感じました。
 そうでなきゃ、参道にエスカレーター据えたりできないわな(笑)。



 神社を出て、赤坂方面へ。TBSとかを横目に、繁華街を縦断しました。
 さすが地名に違わず、地味に坂が多いですね。そういえば「オールスター感謝祭」だっけ、生放送の特番で赤坂一周マラソンとかやってたけど、「心臓破りの坂」とかありましたね。やっぱり高低差が大きいところなんだな。



 その後、例によって住宅地に入り込み、うろうろ。
 途中の道路標識に、六本木、青山などの文字が見えて、少し思案してしまいました。やはり以前通ったところよりは、まだ見ぬ地へ行った方がいいかなーとか。
 そうこう思ってうろうろするうちに、また神社へ辿り着きました。ただし、記紀にも延喜式にも載っていない神社です。
 つまり、乃木神社


 祀られている乃木希典日露戦争の英雄で、陸軍大将、また学習院院長。
 正直、日本の近代史についての私の素養は貧しいばかりで、乃木将軍についてどうこう言えるわけでもなく。
 それでも通りかかった以上、手を合わせはしましたが……。



乃木神社


 本殿の脇に小さな資料館のようなものがあり、遺品などを展示していました。
 そこで、乃木将軍の自刃した日本刀なども見たわけですが……。やはり何と言うか、自分の中に実感としてつかめていない時代の人、そういう時代の物と向き合うと、どういう感慨を持って良いのか分からずに戸惑ってしまうところ。
 なんたって、小学校でも中学校でも高校でも、歴史の授業で乃木将軍の名前なんて聞いた事がないわけです。大抵、なんだかんだで引き伸ばして江戸時代までやったところで学年末で終了ですからね。
 もちろん、いろんな主張や思想にまみれてて、角をたてず、あるいはニュートラルに教えるのが難しい時代でしょうし、避けたくなる気持ちも分かるわけですが。やっぱり明治大正昭和初期という、この辺の時代の事を知らな過ぎるのもマズイよなぁと思いはします。
 思うけど、私自身もなかなか手が出ないのが実情で。
 ただ、目の前の日本刀を自分の喉にあてがう想像をして、身ぶるいする事しか出来なかったり。



 そこはかとなく重い気分で乃木神社を出て、少し歩くと青山通りに出ました。
 ここで左に行けば神宮外苑に行けたようなのですが、この日私が選んだ方向は右。そのまま道なりに歩くと、右手側に公園が見えました。
 高橋是清翁記念公園。……これまた、あまり実感のない名前。
 とはいえこちらは、まあ要するに公園ですので、そんなに身構えることなく軽く散歩できました。



園内にいくつかある、謎の石像。どういう脈絡で置かれているのかイマイチよく分からない(笑)。


 さらに歩くと、やがて道の左手側に豊川稲荷神社が見えてきました。当然拝観。


 ……の前に、この辺りで小腹がすいてきてまして。おまけに、お賽銭に使う小銭もない。
 そこで、ちょうど稲荷境内に入る手前に茶店が3軒ほどあったので、そのうちの1軒に入ってみた。
 で、なんか稲荷神社に来た時の恒例になりつつありますが、いなり寿司を一つ。それから、甘酒を頼む。
 何となく、先日伏見稲荷参道で食べたいなり寿司の、香ばしい味が忘れがたくて頼んで見たのですが、ここのいなり寿司は普通(ぇ  実家でよく食べた、スーパーとかのいなり寿司とそんなに違いはなかったかな。まあ美味しかったですけど。
 むしろ甘酒に感動しました。いやこっちも別段、特に変わり映えのする甘酒じゃないんですけど、久しぶりに飲んだものでね。甘いよ!(そりゃ甘酒だからな


 そして、豊川稲荷境内へ。
 こちらはダキニ天を祭っているんですかね。狐の像が大量に寄り集まってる空間があって、けっこう怖かったり。しかし怖い場所で写真を撮って、変なものが写ったりすると嫌だから撮らないというヘタレ私。



代わりに、奥の院



そして本殿。


ちなみに、今さらな豆知識。ダキニ天は野干という動物にまたがった姿で図像化されますが、この野干(やかん)というのは、元々インドのジャッカルの事で、狐ではありません。
 しかし中国や日本にはジャッカルは生息していなかったため、狐と混同されました。そんなわけでこの豊川稲荷東京別院も、祀られているのはダキニ天ですが、境内には霊狐塚があったりなんだり。
 そんなこんなで。それにしても、そんなに広くない敷地内に、いろいろ詰め込んだ感じの境内でありました。



 さて、豊川稲荷を出て、左手側に赤坂離宮の敷地を見ながら移動。



右手側に見える景色。なんか高架道路撮るのが好きかも。


さらに右手側に見える景色。ウルトラセブンに、こんな形の宇宙人出てきたよね?(知らねーよ
http://pulog1.exblog.jp/2711141/ ←こんなの



 さて、そんな感じで気ままに歩いているうちに、左手側に壮麗な建物が見えてきました。急にそこだけ場所も時代も違えたような印象の。



赤坂迎賓館


 なんかここだけ気合の入り方が違うというか、全体の雰囲気がすごくて、普通に感動。まるで日本じゃないみたいだ……と思ったところで、しかし周りに植えられているのが松の木だと気付く。西洋っぽさ−10ポイント(ぉ
 まあでも、これはちょっとした見ものでした。けっこう見入ってしまったなぁ。



 間もなく、四谷駅周辺へ出ました。
 もうじきこの日もタイムアップという時間でありましたが。ここまでくれば、新宿まで歩いて戻るのもそんなに苦じゃないなと思い、一路新宿方向へ歩きだしてみました。


 無論それだけが目的ではなく、そちらの方向に歩いて、道を一本入ればそこに、四谷の有名な於岩稲荷があるそうで。せっかくだから寄っていこうと。



 そう思って歩きだしたのですが、確かに地図で確認したのに、なぜかたどり着けず。その辺りだろうと思って道をそれるも、全然違う神社に辿りついてしまったりしまして。
 んー、まあ、これはまだ於岩稲荷に行くべき時ではないと、機は熟さずというメッセージだな。あまり深入りしてこだわり過ぎない方がよかろう、と思って結局今回はあきらめたのでした(←臆病




その代わりにたどりついたのが、こちらの須賀神社
 時刻が5時を過ぎていたせいか、なんと賽銭箱もすべて撤収され、戸締りされた後でした。拝ませてももらえない(笑)。
 賽銭泥棒とか、そういった世知辛い事情なんでしょうね。


 ちなみにここは、明治以前は四谷牛頭天王社として栄えていたそうです。が、明治の神仏分離令須賀神社と名を改めた由。
 この神仏分離令はなかなか苛烈だったそうで。牛頭天王を祀る神社の大元締め、祇園感神院も八坂神社と改称されたうえ、祭神も牛頭天王からスサノオノミコトに変更されています。同じ事がここでもあったんでしょう。


 元の通りに戻って、ほどなく新宿の見慣れた街並みの中へ。この日はこれでタイムアップでした。
 その後、関東某所にて、職場の同僚に誘われてアニソンオンリーのクラブイベントみたいなのに連れて行ってもらい、アニソンを腹いっぱい聞く事になったわけですが……まあそれはまた別の話。



 そんなわけで。この日歩いた道行きはおよそこんな感じ


 普段のこの東京彷徨では、どちらかというとローカルな、地元の人たちの暮らしとかの方が目に入って来るのですが、この日は国会に最高裁判所に、でしたし。また乃木神社なども含め、明治の神仏分離にも思いをはせたり、いささかいつもとは違う趣でした。
 まぁ、そういう事にもちゃんと目配りしていかなきゃいけないんですけどね。都合の悪いことだけ忘れるわけにもいかないし。乃木将軍みたいな人を、どう評価するかも分からないまま、じゃあやっぱり良くないんだろうな。主義主張のしがらみに溺れそうになったりもしますが……。《バツの悪い事情にはいつも蓋して、食わせ者のリアル》って、いつまでも歌のまんまじゃいけないのです。
 なかなか気が重いよね。少しずつやっていくしか。