機動戦士ガンダムAGE 第17話「友情と恋とモビルスーツ」
▼あらすじ
前回、辛くもヴェイガンのMSを撃破したアセムだったが、一方のゼハートはガンダムがアスノの屋敷から出撃したらしい事を突き止める。潜入のためモビルスーツ部に入部しアセムへと近づくゼハートはしかし、平穏な学生生活に安らぎを覚えて戸惑う。
それでも任務を遂行しガンダムの所在を突き止めたゼハートは、モビルスーツ部の大会の日を狙ってアスノ家を襲撃させる。しかしこの作戦は、急報を受け駆けつけたアセムによって阻止されたのだった。
▼見どころ
▽平和な学生生活
前回、ついに初陣をかざったアセムですが、そこからしばらく、この作品中では例外的に平和な日々が描かれます。戦闘もなく、クラブ活動に打ち込む事のできる毎日です。
アセムの部活仲間。左側の君、いくらなんでも等身低すぎね?(ぇ
「あらすじ」に書いた通り、ガンダムはアスノ家にあると掴んだゼハートも、潜入のためモビルスーツ部へ入部する事になるのですが……そこで、あまりにも平穏で輝かしい日々のあまり、己の任務を忘れそうになったりもします。
この、戦いの事を忘れる事ができる学生生活は、父フリットにはついぞ訪れた事のない日々でした。モビルスーツを平和な競技に用いるという、恵まれた環境も。こうした日々の積み重ねは、後にアセムが選ぶ道に少なからず影響しているものと思います。
奇しくも、この回のサブタイトルとなっているシャーウィーのセリフ、
「いいか?青春は、友情と恋とモビルスーツだ!」
が示す通り、彼らはモビルスーツを手段ではなく、目的にできる。シャーウィーたちにとって、モビルスーツは道具ではなく、アイデンティティを託すためのステータスシンボルなのでした。
後年、アスノ三代の中でアセムだけが、カラーリングを変えたり飾り的な意匠を付けたり、機能向上に関係のない改造をガンダムに施していく事になるのですが、それも彼のクラブ活動経験に依るところが大きいのかも知れません。
アセムたちにとってのモビルスーツが、単なる戦争の道具でない事は、ガンダム史との照応関係でも強調されています。彼らが参加する大会、「モビルスーツ模擬バトルコンテスト」の開始ナレーションが、なかなか面白いので少し聞いてみましょう。
「さあ、ついに始まりました、モビルスーツ模擬バトルコンテスト! コロニー・トルディア全土から集まった若き技術者の卵たち! モビルスーツを組み上げたのも、操縦を担うのも全て学生! 彼らの知恵が!熱い情熱が!今、ここに火花を散らす!!」
「彼らの望みはたった1つ! 戦って、勝って、優勝すること! しかし、全48チームのうち、それをかなえられるのは、たったの1チームのみっ! 果たして、どのチームが勝ち抜いて、勝利の栄冠を手に入れるのか!」
……これ、何かに似てませんか?
この人のナレーションに(えぇ〜
モビルスーツ同士の格闘大会という事で、案外この辺りを意識している可能性はあります。何度か示した、ガンダムAGEとガンダム史の対応仮説でも、Gガンダムは本来アセム編(Z〜∀あたりまで)に属するわけですし。
そしてGガンダムの舞台となるガンダムファイトは、基本、凄惨な殺し合いを回避するために競技大会で戦争の代替をするわけで、そうした「競技」としてのモビルスーツをアセムはやってきた、という意味を汲むことも不可能ではないように思います。
思うに、この事は『ガンダムAGE』の最終盤に、意外に大きな読解のヒントを与えてくれるような気もします。いずれその時に、覚えていたら書いてみたいと思います。
▽ロマリー・ストーン
前回から、ヒロインとして顔を出していたのが、学園でも噂の
ロマリーです。
前回、ヴェイガンの襲来で足をくじいたところをアセムに助けてもらい、
「二人だけの秘密ね」
とか言っちゃったりしてアセムに急接近したわけなのですが、その後モビルスーツ部を訪れるうちに、シャーウィーの手が滑って飛んできたスパナに当たりそうになったところを、
……ええ、はい。筆者は乙女心をどうこう論評する素養を持ち合わせておりませんので、この事についてトヤカク言う事は控えますが。
ヴェイガン襲撃という危機的状況の中でロマリーを救うという、吊り橋効果的にもかなり優位な行動をとったアセムなのですが、スパナの脅威を取り除いたくらいのゼハートに軍配があがってしまったりするあたり、恋路というのは非情なものですね(棒読み
それにしても不思議なのですが、ロマリーは何だってこんなにモビルスーツ部に興味を持ったのでしょうか。前回、彼女の友人たちはあからさまに嫌悪感を口にしていたはずなのですが、その後も一人でたびたびやってきています。
さらには、モビルスーツのバトルトーナメントにも
これ、恐らく一人で来ています。友達連れならまだしも、一人で観戦とは。
もちろん、ヴェイガン襲撃後はアセムやゼハートが目的という可能性もあるのですが、彼女は第16話の初登場時、モビルスーツそのものに興味を示しており、どうもメカが好きという一面もあるようです。
……メカが好きなヒロインで、主人公と近づきになり、さらに「大義を持った」敵に思いを寄せてもいる、となると、どうにも……
この人の事を思い出したりするわけなのですが、ロマリーファンに怒られてしまうかもしれないので、この話はここまでにしましょう(何
……あ、もちろん、『機動戦士ガンダム0083』の公開は1991年、ガンダムAGEとガンダム史の対応仮説でもアセム編の対応範囲に属します。
ロマリーについては、もう少し先の話で、多分もう一度、上のブロンド美人さんのスクリーンショットを貼って色々述べる機会があると思います(笑)。
▽ガンダム鹵獲作戦
アセムが友人を家に招き入れた事で、ガンダムの所在がバレてしまったわけなのですが。
もちろんアセム自身も慎重に考えるべきところではありますが、しかしどちらかというとこれ、フリットの機密管理意識の方に非があります。この回の最後で示されたように、連邦軍の基地に置いておけば何てことは無かったはずなので。
どうも、フリットはガンダムやAGEシステムについては、根本のところで私物化してしまう傾向があるようです。AGEデバイスをまだ軍人になってもいない息子に託してしまうのもそうですが、これは後年に至っても変わらない部分でした。おそらく、「MS鍛冶」の感覚が続いているのでしょうね。
しかしその結果、連邦軍の司令として威厳を見せている割には、セキュリティ、機密保持の面では常に弱さをさらけ出してしまう傾向があります。……とはいえこれは同情の余地もある部分です。ブリッジに無許可でディーヴァからガンダム運び出すバルガス、それに気づかないアダムスやミレース、ガンダムが奪われても面白がって見ているウルフ、果ては連邦軍の兵器情報を売って戦艦を買うグルーデックと、フリットが接してきた軍人は誰もかれもセキュリティ意識に欠ける人たちばかりだったので(笑)。
で、フリットのそういう所は、彼の周囲の人々もしっかり踏襲しています。
「ええい、相手チームのことはいい! 早くアセムを映さんか!」
などと、テム・レイを思い出させるセリフを吐きつつ白熱しているバルガスさんは、
こんな至近距離に怪しげなトレーラーが横付けされてても気づかない始末です。
……これに先立って、ゼハートの部下、ダズ・ローデンはアスノ家の屋敷について「あの家は警備が厳しい」と報告しているのですが。このあからさまに怪しい大型トレーラーの横付けを見ると、「本当かよ……」という疑念を禁じざるを得ません(笑)。
ともあれ、ヴェイガン出現の報を聞き、試合中に慌てて家へ戻るアセムですが、彼が戻るまで時間稼ぎをしているのは、
正直、これだけでヴェイガンのMSを押さえておけたとは思えないのですが……実際には、アセムが駆けつけるまでガンダムは健在でした。
一応注意しておきますと、この戦闘後、ダズのセリフに「ガンダムを奪取するまでは、潜入工作を続けよとの命令です」というものがあり、この時のダズはガンダムを破壊ではなく、奪おうとしていた事が分かります。おそらくはその事が奏功したのでしょう。ヴェイガンの目的がガンダムの破壊だったなら、アセムが駆けつけるより前に目的は達成できていたに違いありません。
ともあれ、なんとかアセムが間に合った事でガンダム起動。
ゼハートの乗るゼダスRによってピンチになったりもしましたが、どうにか危地を乗り切ったのでした。
……というわけで。
この回は戦闘シーンもそれなりの尺があるものの、やはり学園パートがメインなのだと思います。
私事になりますが、私がちょうど小学生くらいの頃、1980年代のアニメとかだと、学校の関係者やご近所さんが夜は悪の組織の幹部として出て来て戦う、みたいな子供向け作品がけっこう多かったもので(『ドテラマン』とか、若い人は知らねぇだろうなぁw)、ゼハートがヴェイガンの幹部でもあり、同級生でもあるというのは楽しい感覚です。
この学園編がもっと長く続いてほしかった、という声もあります。それも魅力的だったと思いますし、過去に例のないガンダムになったろうとは思いますが……しかし、詰め込みすぎのAGEスケジュールはそれを許さなかったわけで、次回が学園を舞台にした話の最後となります。
引き続き、その意味を追って行きます。
※この記事は、MAZ@BLOGさんの「機動戦士ガンダムAGE台詞集」を使用しています。