四つのサイン

 

 

 

 

 ホームズ原典を読んでしまおう計画進行中。

 

 ホームズ第2長編ということで読んでみたわけですが、構成は前回読んだ『緋色の習作』と似たような感じで、後半は犯人の独白による冒険譚みたいな。今日のミステリからすれば変則的な形。

 そう。で、ホームズが解決のために動く事件ですが、これも後のミステリで言うところのトリックらしいトリックって実はあまり無いんですね。本作は別にハウダニットでもフーダニットでもない。ホームズがいかに事件の犯人を追い、捕えるかという冒険ものという体裁のようです。

 

 同時に、初期のホームズはまだ推理を主眼としたセオリーが出来てなくて、むしろ一種の伝奇冒険小説みたいなコンセプトで出て来たのかなというのが本書を読んでいての印象でした。前作『緋色の習作』がアメリカのとある秘密教団、この『四つのサイン』はインドのとある大事件とそれにまつわる財宝の秘密……という、いずれも物語の舞台イギリスから遠く離れた場所で起こった謎めいた事件につながるわけで、事件解決そのものよりも事件の背後にある秘密をこそ見せようとしていたように思えます。

 そういうコンセプトのブレというか、段々「我々が知っている現在の形」に近づいてくる推移を見られるのが、黎明期の作品を読む楽しみの一つかな、という感じ。

 で、そのまま引き続き刊行順に読み進めるわけですが。