日本って、天下取れるんじゃないの?


 なんか、最近ぼんやりと思うんですが……日本って実は、オタクコンテンツで普通に世界を席巻できるんじゃない? という気が、けっこう真剣にしています。
 いやマジで。
 まあ、そんな繰言を今日は少し。


読売ウィークリー:アニソンは世界を救う
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/yw/yw08083101.htm


とりあえずこの記事。
 他に、『仮面ライダー』の放映の関係で、東南アジアでは藤岡弘さんが超有名人らしいって話もネットで読みましたけど。
 まあこれは話の枕で。



ニコニコ動画ニコニコ動画ランキング in YouTube 06-01 08/08
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4206206


 ニコニコ動画発の動画がYouTubeで海外の人にどう見られているかを紹介した動画。
 ここで、スーパーマリオワールドを改造して、音楽に合わせて自動で進んでいく「全自動マリオ」と呼ばれる系統の動画が、一時YouTubeの全動画の中でTOP5の評価を得ていた事が紹介されてます。
 YouTubeに投稿されたすべての動画の中の上から5位。実際、ランキング上では、ビートルズやクィーンのライブ映像などと肩を並べていたのだそうで。
 動画を見られる方は実際に見ていただければ分かるかと思いますが、世界中からコメントが寄せられています。アメリカからヨーロッパ、アジア、アフリカや中東からも。


 まぁ、これはコメントを拾ったこの動画の作者の取捨選択もあったでしょうから、うがった言い方かも知れませんが……私の狭い知見の中で、ここ最近、日本人がこうまで手放しに賞賛されてるのを見たことがありません。



 また、たしか半月ほど前の読売新聞に載っていた記事だったと記憶していますが、アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』がYouTube上に無断でアップロードされた件について言及されていました。無論、不正なアップロードなのでほどなくネット上から削除されたのですが、このYouTube上の動画を見たアメリカ人によって、日本の同アニメのDVD売り上げの三分の一に匹敵する本数が、本放送も宣伝もしていない米国で売れたという話。


 もちろん、現状、日本のアニメ作品などを積極的に求めているのは、海外では少数のマニアが中心だろうとは思います。
 けれど、こうした周辺状況を眺めてると、これ普通に環境整えて押していけば、ビジネスとして結構大きい商売できるんじゃないの? という気もしてきます。
 上の涼宮ハルヒの事例でも分かるように、インターネットによって情報発信力の優劣がプレーンに均されつつある中で、今まで内向きだったオタクコンテンツが海外に知られて、実はかなりの潜在的なビジネスチャンスが生まれてるらしいなぁと。


 ただし。
 現在の日本の企業が、そうしたエネルギーを上手くビジネスに活かせてない事が、なんかどうにも気になるのですよ。
 なんていうんだろ、端的に言って、今の状況ってもったいなくね? という。


 たとえば。
 ニコニコ動画をぼーっと見ていると、明らかにプロ並みのクオリティと思われるCG作品が、普通に(もちろん無償で見られる)投稿されてて、ン十万再生とかされてる。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1359820
 これとかね。
 他にも、3Dキャラクターを自由に動かして躍らせたりできるソフトを、たったの3MB(ZIPで圧縮するとたったの750KB!)というサイズにまとめて、フリーソフトとして無償で公開している人とかいたりします。
http://dic.nicovideo.jp/a/Mikumikudance


 もちろん、実際に動いているのはオタク向けのキャラクターなので、くだらないと言えば言えます。けど、ちょっと視点を変えて、単純に技術力の部分だけ評価してみると――このレベルの人たちが、無償で自分たちの技術や才能を公開してるのって、ちょっと異常な状態じゃないでしょうか?


 もしくは同人界隈にしても、あんな規模に膨らんでるのって、冷静に考えてみるとおかしくないですか?
 たとえば、18禁作品で非常に恐縮ですが、こんな作品作ってる人たちもいるわけですよ。
http://maniax.dlsite.com/work/=/product_id/RJ037750.html
 これ、商業作品じゃありませんよ? 同人サークルの作品です。
 極端な例ではありますが、はっきり言ってそこらの半端なプロ作品が裸足で逃げ出すような技術力が湯水のように使われてるらしく見えます。多分。
 分かりやすい例で言えば、渡辺製作所の同人格闘ゲームMELTY BLOOD』はほぼそのままアーケードに持っていけるクオリティでしたし、最近でも黄昏フロンティアの同人アクションゲーム『ひぐらしデイブレイク』がPSPで発売されるという話。つまり、技術力の面では、もうプロと同等レベルの人たちが平気で同人分野で動いてるわけで。


 そもそも、ニコニコ動画でもそうだし、pixivにしてもそうですが、日本以外の国では、ああはならないはずです。YouTubeにしたって、アメリカの人たちとかは基本的に、ホームビデオ撮ってアップするのが精一杯というのが大半でしょう? アマチュアが余暇時間で作っているだけなのに、画像編集、手描きアニメ、音楽制作を駆使して自前の娯楽作品をアップして評価しあう場になってるというのは、日本ならではなんじゃないでしょうか。
 Pixivにしたってそうですよね。なんでプロでもないのに、あんなに絵を描ける人がたくさんいるんですか。ああいうコミュニティが成立する事自体、他国の人から見たら驚異なんじゃないかという気がします。上の「海外の反響動画」とかを見ていると。


 日本の若者が駄目になったとただ思ってる年配の方がもしいたら、これ、認識を改めるべきなんじゃないかという気がします。
 技術力、そのポテンシャルで言えば、今の若い人たちもかなりハイレベルなもの持ってると思うよ。
 ただし、そのエネルギー、力が全部、ビジネスの場から駄々漏れに漏れて、アマチュアや同人の世界に流れ出てしまってるんじゃないでしょうか。



 極論すれば、彼らがこうした技術やエネルギーを、商業の場で発揮するのを気持ちいいと思えないというのが、現在の商業・ビジネスの業界の現状なんじゃないでしょうか。
 もちろん、すべてとは言いません。プロとして作品を作り、それで満たされている人は沢山いるはずだ。それはそうです。
 また、プロになりたいけどなれなくて、それで同人やってるっていう人たちも沢山いるだろう、それも分かります。いずれプロになりたいという人たちもいるでしょう。
 けど、同好会とか同人っていう形は昔からあったけど、こんなに大きくなった事なかったでしょ? 今年のコミケ参加者は55万人だそうです。なんでこんな風になってるのさ。


 恐らく、いろいろと窮屈なんだと思います。
 たとえば、権利関係。
 現在、トレーディングカードゲームや、コンシューマー・アーケードのゲームなどで、クロスオーバー的な意図で作られたゲームが増えてきています。トレカなら、
http://pro-r.jp/news/index.html
http://ws-tcg.com/
 この辺かな。
 コンシューマーゲームなら、スパロボがやっぱり一番有名ですけど。
 で、とにかく馬鹿にならない著作権料を支払って色んな作品を集めてきてクロスオーバーをするんですが、やっぱりどうしても、権利者の都合で限界があるんですね。
 ところが、同人界隈ではそういうのを無視して、もっと自由に自分のやりたいクロスオーバー作品を作れてしまう。
http://blog.livedoor.jp/geek/archives/50715723.html
 最近話題になってるのはこれ。
 スパロボにしても、やっぱり参戦作品については頑張ってるわけなんですが、そうすると、著作権的に参戦が無理と分かってる作品とか、最新作すぎてまだスパロボ本編への参加は当分先になりそうな作品とかを登場させた「スパロボっぽい」ゲームがさっさと同人ショップに並んでたりする。
 もちろん同人の側にも問題は色々あるとは思います。けど結果的に今、商業の側が後手に回ってるケースも多い気がするんですよね。


 要するにさ、作り手や受け手の「こういうのがやりたい」「こういうのが見たい」というのに、制約の多い商業側がついていけなくなってるんですね。現在、同人が肥大化の一途をたどってる理由の一端はそういうところにもあるでしょう。


 私は別に権利者攻撃をしたくてこのエントリーを挙げてるわけじゃない。
 ただ、ちょっと考えて欲しいんだけども、今アマチュアニコニコ動画や同人も含むオタク界隈の人たちが持ってるエネルギーや技術は、ポテンシャルとしては世界市場で勝負できるくらいのものはあると思うわけです。現に世界中にファンを作れるようなコンテンツが沢山出てきている。
 それが商業として、ビジネスとして成立していないのは、さて一体どれくらいの損失なのよ、と考えて欲しいってことです。そういう権利を持ってる、企業の経営とかをしている人たちに。
 もちろん、オタクコンテンツなんて世界に恥ずべき文化ではあるんですけど(笑)。それをあんまり推進すると私も馬鹿みたいですが、でもさ、まあ、兵器とか売るよりは良いじゃん? それに、売れるモンなら糞でも売るのがビジネスってもんでしょうが。
 なので、正直、ニコニコ動画を見ても権利者削除を行使する事しかできない企業とか、もちろんその行為自体は正当な、当然のことだと頭では理解しつつ、それでもちょっとイライラしてしまう自分は居るんですよね。お前ら目の前の既得権守ることばっか考えてて良いのかよ、もしかしたら俺ら天下取れるかも知れないんだぜ? 今目の前で駄々漏れになってるエネルギーを、どうにかビジネスとして利潤あげる形にできないか、そういう方向に知恵しぼろうとか思って欲しいんだよ、って。


 ……えーっと、以上、最近頭の中で思ってることを書きなぐってみました。
 かなり乱暴な形で書いているので読み苦しい部分も多々あるだろうとは思いますが……今の私の、わりと率直な気分です。
 まあ私の場合、かなり世間の狭い男なので、事実誤認や針小棒大な部分も多々あろうかと思います。オタクコンテンツを過大評価しすぎなのはもちろんのこと(笑)。
 また、書き手たる私はニコ厨なので、そこも差し引いて読んでいただくとして。
 けれど。少なくとも、今現在、インターネットを一番上手に使ってるのは、日本人なんじゃないの? って。もちろん勘違いかも知れない、井の中の蛙な思い込みかもしれないけど、それくらいの自信はつけたって良いじゃない? っていう気分なのですね。
 そういうわけで。


 天下とってみない?